アンティキ・ヴィニェーティ・ディ・カンタルーポ

●粘土石灰土壌ではないモレーン土壌のネッビオーロ●

海底が隆起したランゲの土壌は海底に由来する。ガッティナーラは火山岩なので山に由来する。ゲンメのモレーンは氷河が削り取った谷、川に由来する酸性土壌。ゲンメならではの個性を最も忠実に表現する。

海に由来しない土壌

1997 年に DOCG に昇格したゲンメ。 北ピエモンテにおいて圧倒的個性を持つ 「 ガッティナーラ 」 とセージア川を挟んで向かい合っている。

『ゲンメの土壌はモレーン。氷河が谷を削り取って堆積した土壌でガッティナーラの火山岩ともランゲの粘土石灰質とも違う 』

ネッビオーロは気候 、土壌の個性を ワインの味わいに反映させることができる数少ない高貴品種 。ランゲ、ガッティナーラ、ゲンメは全く違う個性 。温暖でアルカリ性の粘土石灰で元々海底だった 「 ランゲ 」 のネッビオーロは力強く重厚で大きなワイン に仕上がる 。冷涼でマグマに由来する 火山岩土壌の 「 ガッティナーラ 」 は 少ない果実感。ミネラルが豊富で酸度も高く 、熟成ポテンシャルが非常に高い。

『 モレーンは花崗岩が主で削り取られた岩石、岩屑や土砂などが堆積した土壌。酸性寄りで 、酸は柔らかく果実味もありタンニンの質が細かい 』

海に由来する土壌の「ランゲ」。火山に由来する土壌の「ガッティナーラ」。そして氷河の堆積物に由来する土壌の「ゲンメ」。

『ランゲは海底が隆起した土地だがゲンメはアフリカプレートとアルプス山脈がぶつかった場所なので山に由来する。全く違う土地』

土壌の個性を素直に表現できる造り手は残念ながら少ない。12 生産者しか存在しないゲンメで最も土地の表現に拘るのが「カンタルーポ」。

『 ネッビオーロは気難しい品種なので、 昔の人はそれぞれの土壌と気候の組み合わせで最も優れている地域 にネッビオーロを植樹した 』

モレーン土壌の個性を最も強く表現できる土地こそが「ゲンメ」であり、その「ゲンメ」の最も優れた区画を所有するのが「カンタルーポ」なのだ。

1969年からの歴史

ゲンメを代表する老舗カンタルーポ。 その起源は16世紀に遡る。その頃から葡萄栽培を続けていてゲンメ最古の造り手の 1 人。

『 1969 年にゲンメが DOC に認定されたのを受けて畑の植え替えを進め、本格的にワイン醸造を開始。1977 年に現在の場所で造り手として創業 』

ゲンメで最も古い葡萄栽培家なので「 コッリ・ブレクレメ 」等のゲンメで最も重要で歴史的な畑を数多く所有しているのが彼等の強み。現在の当主は「アルベルト・アルルンノ」。醸造学が専門博士 でカンタルーポ の品質を一気に向上させた功労者 。

『ノヴァーラはイタリアで最も古いワイン造りの歴史を持っている。その中心がゲンメでありガッティナーラ。僕達はゲンメの伝道者でいたい』

ゲンメの造り手の中で最も挑戦的で最も古典的な造り手。 500 年前からあるセラーにはスラヴォニア産の大樽が 20 個並んでいる。

『 若いネッビオーロのフレッシュな個性も大事だが、大樽での長い熟成によって醸成される熟成したネッビオーロの旨味を大切にしたい 』

法規制は最低 34 ヶ月の熟成。内 18 ヶ月の樽熟成となっているが「 コッリ・ブレクレメ 」では 36 ヶ月の樽熟成後、 12 ヶ月以上瓶熟成となっている。

『ネッビオーロは酸素と触れ合う事でしか本当の旨味を表現できない。大樽と瓶熟でゆっくり酸化していくことがゲンメの伝統』

 

長い熟成でしか味わえない個性

畑はゲンメの町を見下ろす丘の上部が主。 典型的なモレーン土壌で南西向き。セシア川の向こう岸にはガッティナーラが見える。

『全ての畑は有機栽培。下草は伸びすぎれば足で踏んで土に戻す。花崗岩が主体で栄養分が少ないので3 年に 1 回肥料を与える』

仕立はグイヨだが2m 程度の高い仕立 になっている。新梢は切らずに伸ばしっ放しで一番上のワイヤーに巻きつけておくだけ。

『新梢を切る事は人間に例えれば指を切って出血するようなもの。強制すべきではない。葡萄樹が伸びたいように伸びるべき 』

春先に新梢を切ることで植物的成長を止め、果実に栄養を集中させる現代的栽培ではなく、葡萄樹自体の健康を優先することが大切だとしている。

『過度に凝縮させる必要はない。人間がコントロールした果実ではなく、葡萄樹が環境に適応してベストの果実を成熟させる 』

ネッビオーロのフレッシュな美味しさの コッリーネ・ノヴァレージ と大樽でのゆるやかな酸化で 2 次的旨味が味わえるゲンメ。ゲンメの土地を知り尽くした彼等がスパンナを通してゲンメの個性を最大化したような彼等のゲンメ。無くなって欲しくないイタリアらしさが味わえる 。