こんなワインです
2015年から借りている新しい畑。標高は310m。土壌はカンヌビやカスティリオーネ・ファレットのみに見られるトルトニアン砂岩質。樹齢は20-25年。発酵期間は約40日間、内10日間はサブマージド・キャップを行う。熟成はスラヴォニア産大樽で30ヶ月程度。日照量は少な目で東向きの急斜面なので引き締まったシリアスな味わいが個性。
G.D.ヴァイラのワイン
WINERY
生産者情報
G.D.ヴァイラ
最も香高いバローロ「ブリッコ・デレ・ヴィオーレ」最上の造り手
名実ともにバローロ村を代表する造り手
バローロだけでなく、フレイザ、バルベーラ、ドルチェットの醸造でも超一流
❖1986年の雹害❖
当主「アルド・ヴァイラ」は穏やかでピエモンテは勿論、他の産地の造り手からも慕われる人格者です。ピエモンテを代表する醸造家としても常に高い評価を受けています。
現在は息子の「ジュゼッペ」が経営を担当。「イシドロ」がアルドの下で栽培・醸造担当としてカンティーナに参加し、家族経営を続けています。
『(アルドの)父はワイン造りをせず、アルバで働いた。私は醸造学校を卒業後、お爺さんが所有していた僅か0.3haの畑と樽の鉄枠だけを相続してワイン造りを開始した』
転機は大不況下の 1986 年でした。雹害でランゲ全域の畑が壊滅的な被害を受けたのです。多くのランゲの造り手達が、代々続けてきた農業を諦め、廃業を選択していきます。
『私はワイン造りを諦める事ができず、この不幸をチャンスと捉え、借金をして売りに出された畑を購入。重要な畑ブリッコ・デレ・ヴィオーレ、フォッサーティ、レ・コステを手に入れた』
こうして、バローロ村の優良畑を手に入れ、偉大な造り手へ成長していきます。偉大なワインは醸造技術だけでは成し得ません。偉大な畑があってこそですから、幸運だったのです。
『醸造家は良い素材を活かし、良いワインを造る事はできるが、悪い素材から良いワインを造り出す事はできない。偉大な畑を持つ事ができたのは幸運だった』
❖伝統派でなくモダン派でもない❖
リンゴジュースはリンゴの味がするべき。他の味は必要ない。バローロを飲めばネッビオーロの味がするべき。樽由来の甘味、タンニン、余計な香は必要ないのです。
『健全な葡萄を収穫し、タンク内で全ての葡萄が順次、発酵を始めることが重要。遅過ぎるとジュースの部分は酸化とバクテリアに侵され、葡萄以外の香が出てしまう』
彼等のバローロは均整の取れた酒質で素直にフルーツを感じさせます。熟成と共に妖艶さを増していきますが、ネッビオーロらしさは、決して薄れません。
『私達は伝統派だが、革新的でありたい。だから毎年100 種以上の醸造を試し、その年の葡萄に合った醸造を模索している。伝統は毎年同じ事をする事を意味しない』
ネッビオーロはカベルネやメルローと違い、果汁自体にアントシアニンを含みません。果皮に多くの要素を持っています。だからこそ、果皮の扱いが重要なのです。
『香味成分は果皮に多く存在する。だからフォラトゥーラ(櫂入れ)が大切。櫂入れで果皮にアルコールが染み込み、香味成分を抽出する。質の高い香味成分だけを抽出する』
高樹齢の葡萄は小粒なので果皮比率が高い。高樹齢の場合、強い刺激は粗さを出してしまう。櫂入れも半分程度に抑え、果帽を濡らす程度にして長いマセラシオンを行う事が大切。
■バローロ・ブリッコ・デレ・ヴィオーレ
ブリッコ・デッレ・ヴィオーレは樹齢50年を超えます。マセラシオンは25日間と長いが、櫂入れは他のバローロの半分に抑え、果皮を動かさない事で畑の個性を表現します。
『バローロ村で一番標高が高く、東斜面なので強い西日を受けない。弱い朝日でゆっくり生育するネッビオーロは名前の通りスミレの香がして強さよりも繊細さが味わえる』
■ドルチェットのスペシャリスト
ヴァイラのもう1つの人気ワインがドルチェット。収穫が早いので天候に影響されやすく、バランス良く仕上げる事が難しい品種。ヴェジタルな風味は日本人にも嫌われがちです。
『ドルチェットは樹齢10年程度で収量が落ちるので植え替えられてしまう。私達のドルチェットは平均樹齢30年以上なので収量が抑えられ、凝縮する。ヴェジタル要素はない』
ドルチェット・コステ・エ・フォッサーティはバローロの優良畑、コステとフォッサーティに植えられている。フォッサーティのドルチェットは樹齢30年。コステは50年を超えています。
❖サマージュ・ド・キャップ❖
ヴァイラの最近の大きな変化はサマージュ・ド・キャップという手法の採用。優しく柔らかい酒質が特徴のバローロ村の若く軽い土壌の個性を、より強調する為に必要でした。
『バローロ村の土壌は若いトルトニアン期のマルネ・ディ・サンタガタ・フォッシリ土壌。泥灰土壌主体のシルトで砂の比率も高く軽い。軽やかで華やかなバローロを産む』
セッラルンガのような骨格や厳しさではなく、柔らかく、しとやかな液体の中に繊細な複雑味や微妙なバランスを表現するのがバローロ村のバローロなのです。
『以前はピシャージュで果皮を沈めていましたが、これでは果皮を刺激し過ぎてしまう。ルモンタージュはモストを動かし過ぎるのでワインが疲れてしまう』
サマージュ・ド・キャップは果皮をネットに入れて常に沈めておく手法。果皮を動かして刺激しないので、粗いタンニンや雑味を抽出する事がなくなります。
『発酵時に発生する二酸化炭素の気泡が、沈んでいる果皮を優しく刺激する事で質の高いタンニンと旨味を果皮から抽出。色調は薄くなるが畑の個性は最大化できる』