こんなワインです
グレラを中心にヴェルディソ、ペレラ、ビアンケッタを混植した5つの畑の葡萄を別々に1次発酵。6ヶ月間のシュール・リー後、アッサンブラージュしてシャルマ方式で2次発酵。リキュールの添加は行わない。完全なブリュット・ナチュールのプロセッコは非常に珍しい。清澄も行わない。年産約1,600ケース。
シルヴァーノ・フォラドールのワイン
WINERY
生産者情報
シルヴァーノ・フォラドール
●『カルティッツェ』をアッサンブラージュした『ブリュット・ナチュール』●
プロセッコの常識を変えた造り手として大注目。カルティッツェを含む異なる個性の5つの畑をアッサンブラージュ。6ヶ月間のシュール・リー。グレラの香りがありながら複雑な味わいは新感覚。
ヴァルドッビアデーネ生まれの兄弟
プロセッコでは珍しい1999年設立の若いカンティーナ「シルヴァーノ・フォラドール」。父方の祖父が亡くなり、高校卒業のタイミングだったシルヴァーノは祖父の2haの葡萄畑を相続してワイン造りを始めることを決意。
『1.5haのカルティッツェと0.5haのカルティッツェに地続きのヴァルドッビアデーネの畑を相続。樹齢も高く最高の条件だった』
更に母方の畑2haも引き受けカンティーナは始まった。醸造の経験が無かった彼等は醸造コンサルタントを雇ってのスタートになる。
『発酵由来の香りが支配的で糖度もブリュットで12g/lと高く、流行にのった造りだった』
一気に人気となり、葡萄が足りなくなった。周辺の栽培農家から買い足して量を増やしていく。大人気の中、品質向上の為に2004年から取り入れたビオディナミによって彼等は大きく変わっていくことになる。
『土壌を改善し、自然環境が向上すると葡萄の香りも強くなった。でも、その香りは自分達のプロセッコには感じられなかった』
2007年、祖先が与えてくれた土地と伝統であるプロセッコ造りに密接な仕事をすべきと考え、葡萄の購入を止め、醸造コンサルタントを解約。
『以前は市場に動かされていた。この土地に生まれた義務を忘れていた。自分が育てた葡萄の香りがするワインを造ることが重要』
この頃の彼等のプロセッコは現在のシャルマ方式ではなくシャンパーニュ方式であった。
『シャンパーニュ方式ではグレラの香りは表現できない。発酵の香りに負けてしまう。プロセッコである意味が感じられなくなってシャルマに戻した』

ビオディナミの副作用
2004年には除草剤、化学薬品の使用を全面禁止。翌年からは500P(水晶)、501調剤の使用を開始。また、肥料は自家製の堆肥のみとした。
『湿気が多い地域なのでベト病が多い。ボルドー液が多く使われているが段階的に廃止し、海藻の粉とプロポリスで対応している』
殺虫剤も使わない。畑で使われるのはビオディナミ調剤と自然の堆肥、海藻、プロポリス等の自然由来のものだけ。秋と春に牛の角で熟成させた牛糞を撒く。秋にバクテリアの数を増やして、春に活発化させる。下草はそのまま残され、年に2回刈り込まれる。地表を耕すことはしない。
『微生物や菌類が豊富に活動している理想的な自然環境。これによって葡萄の果皮に野生の酵母が30種類以上生息する』
これによって以前はできなかった自然酵母での発酵が可能になった。

プロセッコ・ブリュット・ナチュール
畑が変わり葡萄が変わった。自然酵母が畑に戻ったことで醸造も変わっていく。
『一番重要なのは自然酵母で発酵できること。だから除草剤も殺虫剤も使えない』
収穫は完熟前。糖度が上がり、酸度と香りが落ちていない段階で収穫。
『グレラの香りは繊細。よって温度管理は重要。温度管理をしないで高温で発酵させれば品種由来の香えいは消えてしまう』
更にストレスに弱いこの品種の個性をワインに表現する為にラッキングは発酵終了後の1 回だけに減らした。清澄は行わない。そして最重要の工程が6ヶ月間のシュール・リー。1次発酵後、澱と共に春まで熟成。ワインが引力でゆっくり動くことで澱から色々な要素を吸着し、安定していく。
『1次発酵後にフィルターに通してしまえば痩せたワインになる。シャンパーニュ方式のように長く澱とコンタクトすればグレラの個性は隠れてしまう』
春は全ての植物の目覚めの季節。このタイミングで ラッキングして2次発酵を行う。
■ヴァルドッビアデーネ・ブリュット・ナチュール
何種類も造る生産者が多いプロセッコだが、彼等は1種類のみ。それも甘さが特徴のプロセッコにおいてブリュット・ナチュール。2014年、天候不良で熟度が上がらず、収穫量も少なかった。カルティッツェの生産を諦め、他の4つの畑とアッサンブラージュした。
『素晴しかった。カルティッツェは厚みがあるのでブレンドすることでブリュット・ナチュールを可能にする。更に深みが増していく感じだった』
収穫時期は違うので5つの畑毎にタンクで1次発酵、シュール・リー後にアッサンブラージュして2次発酵に入る。畑の個性が無い訳ではなく、逆に畑の個性がしっかりあるのでお互いを補足し、安定させ、更に深みを増していく。
『ビオディナミで畑毎の個性が強まった。シンプルになりがちなプロセッコが5つの畑の個性が合わさって複雑になる。カルティッツェを超えた』
グレラのフレッシュで白桃のような香りを隠してしまうシャンパーニュ方式はプロセッコではない。
『グレラの香りを尊重しながら、複雑味を目指した結果が6ヶ月のシュール・リーとカルティッツェも含めた5つの畑のアッサンブラージュだった』

