こんなワインです
ピュリニー・モンラッシェ村にある粘土石灰質土壌と、サン・セルナン・デュ・プラン村とサンピニー・レ・マランジュの間にある砂質土壌の2つの区画のブレンド。平均樹齢は40年。100%全房で3〜4時間かけて優しく圧搾。軽い沈殿の後、タンクでアルコール発酵とMLFを行う。2つの区画をブレンドし、ステンレスタンクで9ヶ月間熟成。澱引き後または瓶詰め直前にSO2極少量添加する。
メゾン・レノ(レノ・パカレ)のワイン
WINERY
生産者情報

メゾン・レノ(レノ・パカレ)
パカレやラピエールの系譜を継ぐ新世代
フィリップ・パカレの長男が 2023 年に独立。
父やクリストフ、マチューたちから影響を受ける
シャサーニュ・モンラッシェの共有ワイナリーで行う、自然なワイン造り
❖フィリップ・パカレの息子❖
ナチュラル・ブルゴーニュといえば必ず名前が上がる造り手のひとり、フィリップ・パカレ。ヴィン・ナチュールの父マルセル・ラピエールの甥であり、さらにはプリューレ・ロックの醸造長を10年間務め、その地位を押し上げたという功績は、今日多くの人に知られています。
幼い頃から叔父であるマルセルのワイン造りを最も近くで見てきたフィリップにとって、自身もワインの道へ進むことは自然なことでした。
『その土壌を表現するためには、自然酵母の存在が不可欠。必要のない化学薬品を捨てるためには、ワインに関する化学を全て知るしかないんです』
酸化防止剤を使わないワイン造りを提唱した、自然派ワインの祖であるジュール・ショヴェ。その弟子として5年間共に暮らしていたこともあるフィリップはこの言葉を大切にしていて、今でも度々会話の中で口にします。自然なワイン造りを可能にするために、あらゆる化学を学び、自然界の物質と微生物がワインにどう影響し、どう変化させるのかを解明することは、フィリップにとって最も重要なことなのです。ヴァン・ナチュールの代表格のように語られるフィリップ・パカレですが、実際には、自身が行うワイン造りは全て科学で証明できると考える理論派なのです。
『父フィリップのドメーヌで修行を始めたのは、2019年のことでした。その前はトスカーナ州モンタルチーノのワイナリーで、何度か夏休みの間に研修しました』
レノ・パカレは、フィリップ・パカレの長男。子供の頃のフィリップがマルセルのワイン造りをそばで見てきたように、幼い頃のレノもまた、父のワイン造りをそばで見て育ちました。そんな理想的な環境がありながら、実際本格的にワイン造りへの道を歩み始めたのは、20歳を過ぎた頃。2014年から2016年の3年間、夏休み間にイタリア・トスカーナ州、モンタルチーノのドメーヌで研修し、その後はストラスブールのビジネス・スクールで修士号を取得しました。
『本当は、ブルゴーニュとは違ったタイプのワイン造りを学ぶために、新世界のワイナリーで研修してみる予定でした。ですが、2020年頃からの感染症の影響で、断念せざるを得ませんでした』
海外での研修を断念したレノは、自身のルーツである父のもとに立ち戻ることを決め、2019年の収穫からフィリップ・パカレのドメーヌで修行を開始しました。ドメーヌでは葡萄栽培やカーヴでの仕事はもちろんのこと、営業や、管理といった事務作業まで幅広く経験。単にワイン造りのための知識や技術だけでなく、ドメーヌの運営にまつわる多くのことを学びました。ワイン造りに関しては、ドメーヌに入った初めの年はまず白ワインから経験。父フィリップが日頃から言っている、赤は料理、白はお菓子作り、という言葉の通り、より繊細で正確な技術が必要になる白ワインの醸造から修行を開始しました。そして翌年は、赤ワインの醸造を経験。合計4年間、フィリップのもとでワイン造りを経験しました。そして2021年にはより深い知識を付けるため、ボーヌの醸造学校に入り、葡萄栽培と醸造の資格を取得しました。
❖共有ワイナリーでの醸造❖
『父はまだまだワイン造りを続けられる年齢だけど、いつか世代交代は来るもの。その前に実力をつけて、周りに信頼を与えられるようになりたいんです』
最高峰のワイン造りに携われる理想的な環境が近くにあるので、そのまま父のもとで修行を続ける選択肢もあったはずですが、それでもレノは敢えて自立のために、2023年に自身の名を冠したネゴシアン、メゾン・レノを立ち上げました。
父フィリップは耕作代行会社を設立し、契約農家の畑を自ら耕作・栽培し、収穫した葡萄を買ってワイン造りをするという、ミクロ・ネゴシアンのスタイル。息子レノにはまだ、それができる資金力も組織力もありません。葡萄はオーセイ・デュレスやサントネイなど、ボーヌの比較的安価な産地から厳選。そしてセラーは、同じような若い造り手が集まるシャサーニュ・モンラッシェにある共有ワイナリーで行います。おおよそ体育館程度のスペースで、8生産者が設備を共有しワイン造りを行っています。
『醸造は父とほとんど同じ方法です。ただ、設備の関係上できないこともあります。例えば、白葡萄の圧搾にかける時間は、父は6時間ほどですが、僕のところは3時間くらいです』
3,4時間の圧搾は一般的には長いですが、レノの目標はフィリップのワイン造り。基本は共有ワイナリーの設備を使っていますが、時にはフィリップの持つより質の高いプレス機を借り、圧搾したジュースを運んで醸造を行うなどしています。限られた設備と環境の中で、最大限のワイン造りを行っています。木樽に関してはフィリップが2,3年使用したものを譲り受け使用しています。
❖可能な限り自然な醸造❖
レノがワイン造りで大切にしているのは、人工的なものよりもピュアであること、技術よりも自分の感性を信じること、テロワールの特徴を表現すること、味を安定化すること。
『父はもちろん、従兄弟のクリストフ・パカレ、カミーユとマチュー・ラピエールには大きな影響を受けています。可能な限り自然な方法でワインを造るという彼らの哲学は、自分の哲学にもなっています』
フィリップやマチューたちと同様に、100%全房発酵で自然なワイン造りを行います。醸造中は一切の亜硫酸添加は行わず、澱引き後または瓶詰め直前に、最小限のみ使用。発酵前に亜硫酸を添加してしまうと、ワインに情報を与える野生酵母が、働く前に失われてしまうのです。その年の日照量や降雨量など様々な条件により、土壌に存在する酵母が変化するので、毎年顕微鏡でどの酵母が動いているのかを実際に観察し、その酵母たちが最大限働けるように、最適な醸造を行っているのです。