こんなワインです
南東向きの区画で、ほぼ平地に位置する。平均樹齢65年。粘土石灰土壌。手摘みで収穫。圧搾後タンクに入れ、デブルバージュ。オーク樽でマロラクティック発酵まで行う。オーク樽で12ヶ月熟成後、ステンレスタンクで5ヶ月間熟成して瓶詰め。
オロール・バシュレのワイン
WINERY
生産者情報

オロール・バシュレ
マランジュの名門バシュレ家の畑を継承
代々バシュレ家が守ってきた畑を相続し、今や入手困難な人気アペラシオンを所有
真っすぐで伸びやかな酸を感じる、ピュアでエレガントな味わい
❖マランジュに続く名家❖
当主オロールは若干30代。マランジュを代表する造り手であったベルナール・バシュレを祖父に持ちます。
『父ヴァンサンは兄弟で相続争いをし、仲違いしてしまいました。その教訓から、自分は早い段階で独立したかったのです』
偉大な祖父の引退後、所有畑は3人の息子が相続。息子たちはそれぞれで独立しており、そのひとつがオロールの父が興したドメーヌ・ヴァンサン・バシュレ。次男はその息子たちとともにドメーヌ・バシュレ・モノを、三男は現在息子に引き継ぎ、ドメーヌ・ベルトラン・バシュレとしてワイン造りを行っています。バシュレ・モノにいたっては今や世界中で注目を浴びるトップ・ドメーヌのひとつとして有名。バシュレ家は、この土地きっての名手の一族なのです。オロールは2015年に父ヴァンサンのドメーヌに参加。兄エティエンヌと共に父の下でワイン造りを行い、約5年間栽培と醸造の経験を積みました。
『祖父や父、従妹がワイン造りをするのを見て、自分も自然とワイン造りの道に進みました。もちろん今でも困ったことがあったら相談しています。夫も別でドメーヌを持っているヴィニュロンなので、周りには頼れる人が沢山います』
オロールは28才の時に、マランジュとサントネイの境目近くの山奥にあったセラーを購入。特徴的なモザイク模様の瓦屋根を持つセラーは、17世紀から存在するという歴史的な建造物。近くにはコート・ド・ボーヌ屈指の高さである標高512mのモンターニュ・デ・トロワ・クロワがあり、頂上からはワイン畑や渓谷が一望できる素晴らしい眺望が広がります。ワイナリーの周りは自然が豊かで、耳を澄ますと川のせせらぎが聞こえてくるような、人里離れた静かな環境。
『代々バシュレ家が大切にしてきた伝統的な畑であるマランジュ1erクロ・ルソ。サントネイから続く硬い石灰岩盤の下層土が特徴です。マランジュでありながらも、力強く味わいのしっかりしたワインが生まれる畑で、特別な思い入れがあります』
オロールが持つ畑は、代々バシュレ家が管理してきた畑。相続によって受け継いだ畑なので、今や入手困難なアペラシオンを多数所有します。その中でも最も大切にしているのが、一族が代々守り続けてきた伝統的な畑、マランジュ1er Cruクロ・ルソ。サントネイのクロ・ルソから地続きになった区画です。地質的な違いにより評価を得づらいマランジュですが、ここクロ・ルソはサントネイと同じ土壌を持っており、硬い石灰岩盤の上に薄い粘土質が覆っている、ピノ・ノワールにとって理想的な畑。土の温度が比較的低いのも特徴。タンニン豊富で力強い味わいを持つ、素晴らしいワインを生み出します。このクロ・ルソ自体は2つの村にまたがる広い区画ですが、オロールはその中でも標高300mの上部に畑を所有。同じクロ・ルソでも下部は泥灰土壌になるので、異なった特徴を持ちます。
❖伝統派でなくモダン派でもない❖
オロール・バシュレのワインに共通する凛とした印象。真っすぐ通った酸がオロールの持ち味。
『ワイン造りで最も大切にしているのはピュアであること、そしてエレガントさ。そのためには畑での仕事が最も重要です』
一部上級キュヴェなど例外はありますが、基本的にはすべて同じ醸造方法。手作業で収穫された葡萄はすべて除梗し、発酵後は木樽とステンレスタンクで18ヶ月間熟成。木樽は新樽と古樽を併用します。新樽比率は10~15%。
『コート・ド・ボーヌのワインとしては比較的長い熟成期間をとっています。木樽で12ヶ月間熟成の後、ステンレスタンクに移し替えて更に6ヶ月ワインを馴染ませます。そうすることで、ワインにフレッシュさを取り戻します』
現在は醸造設備の関係もあり、ほぼすべてのキュヴェで除梗を行っていますが、少しずつ全房での醸造も増やしていく予定。
❖アロザージュ❖
赤ワインの発酵中には、ピジャージュとアロザージュを併用して抽出を行います。アロザージュとは、南フランスやローヌの伝統的手法であるデレスタージュに似た手法。元々は、水を撒くという意味の動詞arroser(アロゼ)から派生した用語です。正式な醸造用語ではなく、生産者の間で使われる砕けた表現。
デレスタージュは主にカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、シラーなど果皮の厚い葡萄に使われる手法ですが、現在は他の地域でも行う造り手が増えています。
『ピジャージュは最低限しか行いません。代わりにアロザージュを行うことで、適度に酸素に触れながら優しい抽出を促します。柔らかく繊細なワインになります』
発酵が進み、果房が発酵槽の上部に浮上してきた時に下から果汁だけを抜き出します。ここでデレスタージュでは、抜き出した果汁を一度別のタンクに移し静置しますが、オロールでは別のタンクには移さずに、そのまま元のタンクの上に戻します。そうすることで、適度に酸素を取り込むことが出来、酵母の働きを促進します。ピジャージュやルモンタージュはタンク内を撹拌しながら抽出を行いますが、種子や果皮に刺激を与え過ぎてしまい、色素や香の成分が抽出されるのと同時に、不要な渋みや苦みが出てきてしまいます。特にマランジュは未熟な香りが出てきやすいため、優しく抽出ができるアロザージュの手法をとっているのです。