ワインを生き物として捉えればワインは変わる
モストの情報(DNA)を殺さずに、そのままワインに移していく事が自然なワイン造り
他のシャンパーニュとは全く違う世界観で新しいシャンパーニュの可能性を感じさせる
❖良心のワイン造り❖
『クール・ヴィキュルトゥール。畑、葡萄樹を感じ、理解し、ビオディナミを超えて、モストをワインに変える段階もモスト、ワインにとって最適な環境を意識する事を意味します』
オーギュスタン5代目当主、マルク・オーギュスタンが作ったCoeur(気持ち)Viti Culture(栽培)を組み合わせた造語でオーギュスタンのワイン造りを、よく表現しています。
『グラン・クリュ、アイ村の2km北に位置するアヴネ・ヴァル・ドール村で5代続くドメーヌ。2012年に有機認証を得ている9haの畑とヴェルテュにも少し畑を所有』
祖父の時代、1870年代から有機栽培を模索し、父親が2004年に全ての科学的薬品の使用を中止。1991年から現当主、マルクが引き継ぎます。
『2012年にはエルヴェ・ジェスタンと出会い、栽培だけでなく、モストをワインに変化させる醸造の重要さを学び、オーギュスタンのワインは大きく進化しました』
所有畑は9haで全てビオディナミですが、その大半をルクレール・ブリアン、マルゲ等、考え方を同じくする造り手に売っています。自分達で醸造するのは2ha分のみ。
『家族4人だけで、栽培から瓶詰めまでをクール・ヴィキュルトゥールの考え方で行える規模は2haが最適と考えており、今のところ、この規模を超えるつもりはありません』
2012年にビオディナミを導入した時、葡萄畑は苦しみました。同時に家族も苦しめられたのです。本当のワイン造りは造り手本人も含めた均衡が必要なのです。
『葡萄栽培は自然の中にあり、ワイン造りも、その延長に位置します。そこに関わる造り手も自然の中にあり、ワイン造りを楽しめないといけないと考えるに至りました』
私達にとって、ビオディナミは教科書に従った農業ではなく、生き方の選択です。後世に自然を残し、エネルギーのあるシャンパーニュで飲み手を幸せにする為に必要だったのです。
❖ビオディナミとホメオパシー❖
ビオディナミでは畑そのものを生命体として捉えます。周囲の自然環境と共存する事で農薬が無くても、害虫を排除しなくても、果実を実らせる事が可能になるのです。
『月が地の星座の正面にくる根の日に耕作し、剪定は月が火の星座の正面にくる果実の日に行う。そうすれば、自然と土は活力を取り戻し、果実は強く成長します』
地球上では太古の昔から、地球の4大要素と植物の4大要素が呼応してきました。土と根、水と葉、空気と花、火と果実の関係は、世界中、全ての植物に共通です。
『ホメオパシーは栽培に有効です。病気を予防するには、その病気を経験した葡萄樹を溶かした水を散布し、畑にその病気の情報を覚えさせ、抵抗力を強めます』
人間に使われるワクチンのように、病気の情報を、ほんの少し与えると、葡萄樹は抵抗力を活性化させるので、その病原菌が蔓延しても免疫を持って対抗できるのです。
『害虫対策も同じ。害虫の死骸を粉末にして水に溶かし、葡萄樹に噴霧すると、害虫は葡萄樹内に既に害虫の存在を感じ、他へ移っていく』
このように化学薬品を使わず、自然の中にあるものを活用して土地を、葡萄を強くしていく事で葡萄のエネルギーは高まり、同時に生物多様性が維持され自然環境も保持できるのです。
❖ワインは生きている❖
『収穫は果実が葡萄樹から切り離される、葡萄にとって激変の瞬間。優しさと繊細さが求められるので女性のみで行われます。葡萄はもぎ取っても、投げてもいけないのです』
プレスはコカールで時間をかけて、果皮や種子を刺激しないように行い、最もピュアでバランスを失っていないモストを得ます。これは畑の情報を正確に保持している状態です。
『発酵はエナメルタンク、木樽、又はアンフォラで行われます。ステンレスタンクは使いません。ステンレスは殺菌能力が強いので酵母の動きを弱めてしまう』
モストが持つ情報(DNA)はモスト中の微生物やバクテリアも含む。これを正確にワインに移行させる事がワイン造り。殺菌力の強いステンレス製の容器での発酵は不可能。
『ワインは生きています。ワインを生きたまま保存する為にはステンレスタンクではいけません。ステンレスは殺菌力が強いので酪農に使われているのです。ワインを殺してしまいます』
温度管理なし。ノン・コラージュ、清澄、フィルターもなし。発酵は各畑のモストから採取した酵母をそれぞれ瓶内で培養し、各畑のモストの発酵時にスターターとして添加します。
『アンフォラは宇宙と呼応し、ワインを攪拌します。だから、木樽もアンフォラと同じ形状に変更している。地球と呼応する木樽が宇宙とも呼応できるようになる』
ティラージュはマダガスカル産の蔗糖を使い、分子への浸透圧が最も低い小潮の日に行われます。2次発酵は最後の変化なので優しく、ゆっくり行われます。
『ドサージュは必要なくなりました。葡萄自体の完熟を正確に見極めれば、情報が多く、ミネラルやタンパク質、グリセリンといった旨味を持った葡萄が得られるからです』
オーツー・ロゼはアヴネ・ヴァル・ドール村のピノ・ノワールの力強さや太さを素直に表現する為にセニエで造るロゼ。このロゼを造る葡萄が収穫された畑の地下で熟成させたのが、ガイア。
『その土地の栄養素と水分、そして太陽を浴びて育った葡萄から造られたシャンパーニュを、その葡萄が生まれた畑の地下に埋めて3年間熟成させる』
熟成場所が違うだけのオーツー・ロゼとガイア。地中4.5mで葡萄の根に囲まれながら熟成したガイアの野性味とセラーで、ある意味管理されたオーツー・ロゼの正確さは全く違います。
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