バラジウ・デ・ヴォシェール

●7品種混植混醸のタヴェル、完全酸化防止剤無添加●

北タヴェルはシャトーヌッフ同様の複雑な土壌。その複雑な土壌で混植混醸された葡萄を完全酸化防止剤無添加 で仕上げた生ワイン。ラングロールとは全く異なる個性。

ラングロールに刺激された

南部ローヌの主役はシャトーヌッフ・デュ・パプ。タヴ ェルとリラックは有名なだけで内容の無い商業的ワイ ン産地に成り下がっていた。

『タヴェルに足りなかったのはテロワールでも天候で もなく、造り手の情熱だった。ラングロールの成功で そう気付かされた』

退屈なタヴェル・ロゼを変えたのが「ラングロール」。 自由で自然なワイン造りで圧倒的美味しさをタヴェ ルから発信。世界中で人気となった。

『ラングロールから1本道を挟んだ所に位置するの が「バラジウ・デ・ヴォシェール」。現当主はクリスチャ ン、ナディアの仲良し夫婦』

クリスチャンの義父「バラジウ」が 1986 年に「シュマ ン・デ・ヴォシェール」に創業した農家で、野菜の栽 培が主だが、少しの葡萄畑も持っていた。

『地元農家のクリスチャンとアルジェリア北部を拠点 とするベルベル人でカビル族出身のナディアと結婚 し、2007 年からワイン造りを始めた』

元サッカー選手ジネディーヌ・ジダンもカビル族出身。 アルジェリアはワイン造りが盛んで工業的でない、自 然なワイン造りが今も行われている。 農家的で穏やかなクリスチャンが葡萄も含めた畑作 業を担当。反対に、いつも元気で積極的なナディア がワイン醸造を担当している。

『醸造学校には通わず、自然と身に付いたワイン造 りを実践しながら、タヴェルに合ったビオディナミを 独学で勉強し取り入れている』

義理の父親から相続した畑はタヴェルとリラックに合 わせて 1ha。平均樹齢は 90 年で 7 種類の葡萄品 種が混植されている。

『南ローヌの田舎の農園は伝統的にグルナッシュ、 サンソー、シラー、ムールヴェードル等を混植してい た。今では非常に珍しい』

タヴェルの商業的ワイン造りとは無縁の田舎の農家 の葡萄畑。シャトーヌッフやジゴンダスでは見つける ことのできない自然な畑が残っている。

樹齢90年混植混醸

2007 年からワイン造りを開始するが、AOC の規制 に従いながら、最小限の農薬を使って造っていた自 分達のワインに納得できず、中断してしまう。

『2011 年からビオディナミを導入し、一切の農薬の 使用を中止。ワイン醸造でも亜硫酸も含め何も加 えないように変更された』

ビオディナミ調剤やコンポストも自分達で造る。購入 することはなく、信用できる友人の家畜の糞や野菜、 ハーブを使っている。 全ての畑は混植でゴブレ仕立て。通常のゴブレとは 異なり、枝は地を這う様に自由に伸ばされているの で機械は入れない。

『伸びたい方向に伸びるのが理想。生産性の為に 強制するのは自然な葡萄樹とは言えない。葡萄樹 は自然な状態で最もその個性を発揮する』

タヴェル南部は重い粘土質だが、彼等の畑が位置 する北部の土壌はシャトーヌッフと似ていてガレ、粘 土石灰質、砂質が複雑に入り組んでいる。

『シャトーヌッフ同様に色々な土壌と混植された葡 萄品種がワインに複雑さを与えてくれる。ドリンカブ ルなだけのロゼは造らない』

 

 

酸化防止剤完全無添加

ワイン造りも至ってシンプル。手作業で収穫した葡萄 はコンテナを改造した冷蔵庫に入れて冷却。

『収穫した葡萄を 6 度で冷やすことでハサミムシが 出てくるのと発酵温度を低くすることでワインはフレ ッシュさと香を手に入れる』

冷やすことで酸化も抑えられる。1 日冷やした白葡 萄はバスケットプレスで圧搾してステンレスタンクで 全ての品種を一緒に発酵。 赤品種は全房のままステンレスタンクに投入。セミ・ マセラシオンカルボニックででマセラシオン 3~4 週 間。そのまま 1 年間熟成させる。

『醸造中、亜硫酸は一切使用しない。梗に含まれる 酵素と天然のタンニン。そして発酵由来の二酸化 炭素を活用して酸化防止する』

二酸化炭素や窒素も使用せず、酸素と触れ合うこ とが多い状態でのワイン造り。白品種はバスケットプ レスで一時的に酸化されている。

『果汁段階から酸素を経験することで酸化から強く なる。色調は少し濁るが、酸化に抵抗力を持ったワ インが出来上がる』

年産 10,000 本のワインは収穫からボトリングまで一 切の酸化防止剤を添加しない。ノン・フィルター。