カミュ

●ジュヴレ特級畑『蔵出しバック・ヴィンテージ』●

ジュヴレ・シャンベルタン特級畑の最大所有者。伝統的手法で醸されたワインはドメーヌの地下セラーで長期熟成さ れ、飲み頃を迎えたものからリリースされる。

 

ジュヴレ特級畑の最大所有者

1850 年代から「カミュ」では葡萄栽培が行われてい た。現当主「ユベール」は 16.8ha を所有。その 2/3 は特級畑だと言うから贅沢。勿論、ジュヴレ・シャン ベルタン村において最大の地主の 1 人で最大のグ ラン・クリュ所有者。 「ユベール」は1981~2004年の長期間INAO の地 域代表を努めた。更に 1993年にはIBV(ブルゴーニ ュワイン事務局)の局長を務めるなど地元の人望も 厚い。 80 歳を超える「ユベール」は今も毎日畑で働いてい て、事務作業は娘の「エディ」が担当している。

『父は 2013 年に畑で倒れた。今は回復して毎日 畑で作業している。好きなのだからしょうがない』

50年間変わらない醸造

彼等の醸造所は非常にシンプル。1 階の伝統的な 赤い発酵槽には 90 年代に温度調節機が導入され たが、基本的に 50 年間何も変わっていない。

『50 年間で進化したのは発酵時の温度を下げる装 置と振動する選果台だけ。これで十分』

40 年を超える葡萄樹から産まれる健全な葡萄は収 穫後100%除梗され、セメントタンクで1週間から 10 日間の 1 次発酵に入る。

『ルモンタージュとピジャージュを1日1回だけ優しく 行う。決して抽出を強くしてはいけない』

その後、「ユベール」お気に入りの 1920 年製のプレ ス機でゆっくりプレスされたワインは 15~18 ヶ月間 樽熟成。 新樽の比率は平均 25%(グラン・クリュに関しては約 50%)。シンプル。彼等のワインは昔ながらのブルゴ ーニュ。ワインを更に上のレベルに押し上げようとい う造り手は収量を落とし、凝縮度を上げる。 「ユベール」は上のレベルを目指すのではなく、自分 の畑の葡萄をワインに変えるだけ。

『新しい技術は必要ない。父が造っていたあのワイ ンを造るだけ。ジュヴレ・シャンベルタンのアントシア ニンは薄かった。今は濃いものが多いけど。昔の滑 らかなワインが好きなんだ』

昔ながらのジュヴレ

彼等は自分のワインを時代遅れのワインと呼ぶ。

『私達の時代のジュヴレ・シャンベルタンはこういう ワインだった。タンニンは少なく、色素も固定できな かった。下草のような香が懐かしい』

この 30 年でブルゴーニュは大きく変わった。醸造技 術の進歩はそれ以前の 10 倍以上の速度で進んだ。 窒素充填や逆浸透膜など当時は考えられないこと だった。

『技術の進化は新しい流行を作りだす。しかし、新し い流行と共に伝統が見直されることがなければ食 文化も含めた伝統工芸は消えてしまう』

訪問した日も「ユベール」は畑で剪定中だった。電 動でない手動の鋏を使って剪定していく「ユベール」 は人気者で沢山の人に握手を求められる。

『樹勢に合わせて枝の長さを変えてあげれば葡萄 樹は健全に成長できる。樹勢が弱い樹は短く剪定 すればいい。もう年寄りなのだから』

シャペル・シャンベルタンの樹齢 70 年の区画は死 んでしまった樹も多く、葡萄樹が少なくなっていた。 それ以上に年をとった「ユベール」は本当に元気で 職人そのもの。 「カミュ」の酒質は決して強くないし、圧倒的な存在 感も無いのかもしれない。ただ、純粋で無垢な仕事 を感じることができる。完璧な状態の「カミュ」をゆっく り楽しんで欲しい。