シャトー・イヴォンヌ
●クロ・ルジャールのフランソワーズ・フコーから引き継がれた●
歴史的な畑をクロ・ルジャールの奥様フランソワーズがビオディナミで復活させたがオーナーと喧嘩別れ。その後を引 き継いだマチューがフランソワーズの思想を継承している。
クロ・ルジャールが救った
16世紀に僧侶達によって造られた荘園なので歴史的重要な畑を所有していた「シャトー・イヴォンヌ」だが、徐々に衰退。優良畑は荒廃してしまう。
『1997年、この優良畑を復活させるべく、新しいオーナーがクロ・ルジャールの奥様フランソワーズ・フコ ーの協力でビオディナミを導入。11ha、28区画もの 畑を生き返らせた』
フランソワーズ女史はクロ・ルジャール同様に自家製の調剤を使い、土壌の活性化と痛んだ古い樹の治 癒を行い、見事に復活させたが、オーナーが理解を示さず頓挫してしまう。その後、2007 年にフランソワーズの薦めでブルグイ ユのドメーヌの息子「マチュー・ヴァレ」が買い取り、 現在に至っている。
『10年間のビオディナミによる治癒で畑は生命力を取り戻し、畑は最高の状態。フランソワーズのオマージュでイヴォンヌという名称を続けている』
フランソワーズ女史のビオディナミだけでなく、古い樹を残し、収量を極限まで、クロ・ルジャール並みに抑えているのも変わっていない。
『畑は20年以上化学薬品が使われていない。醸造所も引き継いだので蔵付き酵母も発酵温度や熟成環境も変わらない』
20年間のビオディナミ
畑では自家製調剤、ハーブ、薬草等と極少量の硫 黄と銅が使われている。雨が多い地域なのでベト病対策で銅は必要だが、将来的に止めていく。
『雑草は時々、足で踏んで自然と枯れていくのを待つ。シガリエ(害虫)にはエスカルゴで対応し、ウドンコ病にはスギナで対応する』
ここ数年、遅霜による被害が続き、各生産者は春先に畑にストーブを置き、ガソリンを燃やして霜から守っているがマチューはこれを嫌う。
『ガソリンを大量に燃やすことが自然環境にとって良いはずがない。霜対策にはなるが自然環境の保 全には全くならない』
遅霜対策としては、冬の剪定時期を遅らせ、葡萄樹が目覚めるタイミングを遅らせることで遅霜よりも遅く発芽させるようにしている。 28 区画の葡萄樹は全てオリジナルの葡萄樹で、クローンは一切使用していない。クローンの利便性より も土地の味を大切にしている。
『シュナン・ブランは20種以上のクローンがあるが、これは土地の個性を殺すと考えている。マッサルセレクションでその区画の個性を残す』
更に、彼等の冬期剪定は枝を極限まで短く剪定してします。通常の造り手は霜等で痛むことを考え、長く剪定することで多くの芽を残し、春以降、芽を減らし ていくが、彼等は最初から少ない。
『冬の剪定で6つの芽を残し、春以降に芽かくして3つに減らす。最初から少なければ、樹はより少ない芽に栄養や力を使える』
そうすることで、樹の最大の力を少ない芽に集中させている。収量は20~25hl/haとこの地域の平均的収量の半分程度。シャンパーニュの平均の 1/4 とい う少なさとなっている。
より純粋さを求めて
栽培は基本的に何も変えていないが、醸造面では少しずつ変化している。野生酵母のみでの発酵、温度管理も行わない等ベースは同じ。
『石灰岩盤を掘ったセラーは温度が低いので温度管理は一度も必要になったことがない。自然の温度変化こそがその年の個性』
変わったのは樽。以前は100%新樽を使用していたが、現在では、バリックはほとんど古樽に変更。一部はフードルを導入した。
『新樽でも問題ない位に強い果実だが、よりその土地の個性を現す為にストッキンガー社のフードルを導入。よりピュアに仕上げたい』
ストッキンガーのフードルはタンニンも香もワインに一切何も与えないが酸素置換が少しある。古バリックの強めの酸化と併せることでバランスをとる。
『ステンレスタンクを使用。野生酵母のみでアルコール発酵後、樽に移しておく。セラーが寒いので翌年の6 月までマロラクティックは起こらない』
発酵後、シュール・リーを1年程度経験させてから 澱引きしアッサンブラージュしてボトリング。