クロ・ド・ラ・ボネット
●本来のコンドリュウの味わいを自然な畑から再現●
コンドリュウの中でも「コート・ボネット」は森に囲まれ、他の畑と隔離された場所。60年間荒廃していた畑を有機的アプローチで復活させた信念の造り手「クロ・ド・ラ・ボネット」。
コンドリュウ最高峰コート・ボネット
コンドリュウは難しい産地だ。ヴィオニエの適度な凝縮感とオイリーさ、フラワリーで優れた芳香性だけが先行してしまい、テンションの高いワインはほとんど見つからない。残念ながら商業的なワインばかり。
『商業的で収量が多く、第1アロマだけのシンプルなヴィオニエが多いのでコンドリュウの本来の深み、ミネラル表現は今や貴重な存在』
1960年代、コンドリュウは僅か12haだったが、20世紀に入ると98haまで開墾されたが、そのほとんどは商業的ワインで評判を落としていった。
『コンドリュウで最も自然が残る場所がコート・ボネット。森に囲まれ、周辺に畑が無く、生物多様性が自然と確保されている』
クロ・ド・ラ・ボネットの現当主「アンリ・グイエ・モンタボネ」「イザベル」夫婦が1992年にコート・ボネットの南西斜面の森1.5haを購入しドメーヌが始まった。
『段々畑の残骸が残っていた。1960年代は葡萄畑があった場所だが第2次世界大戦後に放棄されて荒廃していた』
農薬も無かった60年代の農民は、そこが優れた土壌でテロワール的にも守られた場所であることを熟知していたから畑を作ったのだった。
『土壌は花崗岩にアルゼーユ(雲母)が混じる理想的な土壌。極度に乾燥するコンドリュウでアルビュエル川への地下水脈から水分を得る』
コート・ロティ以上の急斜面に手作業で掘り出した石を積み上げ段々畑を形成していく。幅は1m程度しかなく、効率は非常に悪い。
『働く人間にとっては厳しい環境だが、崖の中を北風が常に吹きぬけるのでカビがなく、ウドンコ病等の病気が少ない』
ヴィオニエは開花時期に冷気が必要。ある程度の冷気がヴィオニエに長い生育期間を与え、収量を落とさせ、複雑味を与える。
『コート・ボネットはヴィオニエに複雑さ、ミネラル感を与えてくれる珍しいテロワールで他の産地のヴィオニエには無い個性を味わえる』
化学薬品が使われたことがない
畑の作り方は「ジャン・ミッシェル・ステファン」に習った。段々畑の石壁は敢えてコンクリートを使わないで積み上げるだけ。
『コンクリートは水の流れを止めてしまうので使わない。崩れたら、もう1度積み上げるだけ。自然に逆らってはいけない』
伝統的仕立で三角形の支柱に葡萄樹を固定し、風を受ける帆船のように枝を広げ、葡萄樹の間に風を通していることで病気を防ぐのと同時に果実が焼けるのを防ぐ。
畑では硫黄と銅、プレパラシオン以外は使用されない。1960年代から1度も農薬が使われていないことになる。
『第2次世界大戦後から60年間畑は自然に戻り、休んでいたので土壌は最高の状態なので、土壌を壊さないことが大切』
極度の乾燥から守る為、耕起は冬から春のみ。夏場に耕すと地中の水分が蒸発し微生物も死んでしまうのだそう。
『夏場は酷い乾燥なので地中深くまで根を伸ばしている葡萄樹は大丈夫だが、雑草すら生き抜くことができないので草むしりも必要ない』
コンドリュウで有機栽培を導入し、自然なワイン造りを行っているのは彼等を含めて5軒しか存在しない。それ程、厳しい環境なのだ。
ヴィオニエの最適地
ワイン醸造は栽培同様にできる限り介入しない事を基本とするが、暑いコンドリュウならではの工夫が随所に活かされている。
『ゆっくり成熟したヴィオニエのみを数回に分けて収穫することで酸度、糖度、果実味、香味成分、ミネラル、タンニンのバランスを得る』
収穫のタイミングは、糖度以上に酸度とフェノール類の成熟を特に重要視して決めている。より深みのある多層的なワインを目指している。
『収穫後はドライアイスを使って、酸化から守りながら温度を下げて、揮発的な香を守り、フレッシュさをワインに与えている』
発酵は野性酵母のみ。ステンレスタンクで始めて、発酵が安定したら古いバリックに移して発酵を続けていく。
『近年の気温上昇で酸を足すことが許され、足す生産者が多いが、私達は足さない。葡萄がワインを造るのであって化学が造るのではない』
ヴィオニエは本来、アッタクの陽気さだけでない高貴さがある品種。厚い果実の奥に確実に土地の味を感じさせる彼等のワイン。コンドリュウこそがヴィオニエの最適地であることを教えてくれる。