ダミアン・ロロー

『サヴニエールを代表する造り手』レヴュー・ド・ヴァン・フランス

サヴニエールの伝統を変えた「ダミアン・ロロー」。彼の造るサヴニエールは他の造り手を圧倒する力強さ、生命力、 そして美しさを持っている。世界が注目するサヴニエール。 

サヴニエールの常識を覆す

「レヴュー・ド・ヴァン・フランス誌」が間違いなく「サヴニエール」を代表する造り手になると紹介したのが 「ダミアン・ロロー」。 2006 年から本格的に「サヴニエール」でワイン造りを 開始した若手。日本では無名だがフランス国内では 既に大人気となっている。

「ダミアン」は全てを変えてしまった。歴史的に還元 的な造りが主流だった「サヴニエール」。 まだ緑がかった状態、潜在アルコール 12 度程度で 収穫し、還元的に醸造したワインは硬く、果実に乏し く、強固なワインだった。

『果皮が金色に変化するまで待ち、種まで熟させる。酸度が落ちる直前に収穫。貴腐菌が少なく、酸度、 熟度の高い状態を目指している』

今でも多くの造り手達は還元的な造りが多く、「サヴニエール」の良さは 10 年後でないと解らないとも言 われている。

『還元ではなく常に少量の酸素とコンタクトしながら発酵、熟成し成長させる。還元でワインを守るので はなく、健全に成長させる』

フランスで最も熟成する白ワインとも言われるのは還元の要素が強いから。還元に果実香が隠れてしま っているワインは健全ではない。

『この地方の伝統的な還元的醸造は葡萄の力が足りなかったから。自然栽培の葡萄は力があるので還 元的である必要がない』

全ての畑は 2009 年からビオディナミを導入。化学 薬品や除草剤は一切使用しない。 使用するのはシリカ調剤、牛糞ベースのコンポスト、 硫黄、ハーブ。極少量の銅のみ。

『銅も極力使用しない。ベト病対策はハーブを煮出 したものを散布することで予防している』

シスト土壌を活かす

6人の子供を持つ「ダミアン」。パリ郊外に生まれ、植物コンポストの販売会社で働くが、醸造家だった叔父と共にワイン造りを始めてしまう。1998 年に「アンジュ」と「サヴニエール」でワイン造り を開始。土壌のポテンシャルの高い「サヴニエール」 に惹かれ、畑を買い足していく。

『砂岩質シストと流紋岩が複雑に入り組むのがサヴニエール。流紋岩は僅かに鉄分を含んでいてミネラ ルの宝庫』

「アンジュ」を引き払い、憧れの「ロッシュ・オー・モワ ンヌ」にも 2 つの小さな区画を獲得。

『ロッシュ・オー・モワンヌは砂状になった泥灰岩と砕けたシスト土壌。下層土は流紋岩。ローヌ川を見下 ろす丘の傾斜地で理想的』

「ドメーヌ・エミール・ベノン」の醸造所を買取りエピレに醸造所を構え、最高の環境が整った。 「メイリュ・ド・ヴァン・フランス」において「サヴニエール」で星付き評価を得ているのはニコラ・ジョリーの 「クール・ド・セラン」含め 3 社。そして遂に 2016 年 「ダミアン」が 1 ッ星を獲得した。

ロッシュ・オー・モワンヌ

■サヴニエール・プティット・ロッシュ典型的シスト土壌の数カ所の畑。基本的に若い樹から収穫された葡萄を使用。

『活き活きしたエネルギーに満ちたワイン。果実の暖 かく幸せな雰囲気を味わえる』

「サヴニエール・レ・ジェネ」と「サヴニエール・ル・ベ ル・ウーヴラージュ」は同じレ・ジェネ畑から生まれる。

■サヴニエール・レ・ジェネシストを中心に表土から地中深くまで砂質が強い区画から造られるのが「レ・ジェネ」。

『砂が葡萄樹を温め葡萄は良く熟す。果実は大きく、芳香に優れる。若い内から素直で楽しめる』

■サヴニエール・ル・ベル・ウーヴラージュ 砂質が少なく、粘土比率が高くなる。表土に散らばるシストの中には青い班岩が含まれ鉄分が豊富。同 じ畑の中で 2 つの個性に分かれている。

『葡萄樹はストレスが多く、粒は非常に小さい。果実よりもミネラルが表に出る。冷たく硬い印象。熟成によって真価を発揮する』

■サヴニエール・ロッシュ・オー・モワンヌ0.25ha。砂岩質シストと流紋岩が複雑に入り組む土壌で「クール・デ・セラン」のすぐ隣に位置。1965 年に植樹された区画で樹齢は 50 年を超す。

『収量は 20hl/ha 以下。年によっては 15hl 以下に もなる。1 年長く熟成させないと理解できないほど に複雑な構成』