グラーチ

●『エトナ』の繊細さを感じて欲しい●

エトナ北側斜面。ブルゴーニュのような軽やかで伸びのある新しいタイプのエトナ。醸造はクラシック。セメントタンクでの長期間発酵。大樽での熟成。グラーチ独特の仕上り。

新しい世代のエトナ

「ベナンティ」から始まったエトナの歴史。その後「マルク・デ・グラッツィア」「パッソピッシャーロ」等の新しいスタイルの造り手が出現し、一気にエトナは世界的 人気の産地に変化した。 そして今、第 3 世代が出てきている。「フランク・コー ネリッセン」「ジローラモ・ルッソ」「グラーチ」。非常に 仲が良く、お互いのワイン造りを認め合う 3 人。

『元々実家はシチリアの葡萄栽培農家だったが、農家は継がずにミラノの投資銀行で働いていた。エト ナを訪れてワイン造りを夢見るようになった』

2004 年、お爺さんの死を機に実家に戻った「アルベルト・グラーチ」は量を重視した一般的なシチリアの 栽培農家だったお爺さんの荘園を売り、エトナの畑を 購入した。

『エトナは特別な土地。火山岩土壌。豊富な太陽が ありながら標高が高いので冷涼。そして、100 年以 上の古い樹が残っている』

アルベルトの好むワインは「ジュゼッペ・マスカレッロ」 や「ジャコモ・コンテルノ」のバローロ。

『規律の中に厳格さがある。妖艶さ、純粋さがあって 野蛮さはない。そんなワインがを造りたい』

彼のカンティーナは 100 年以上の歴史を持つ建物。 古い大樽が残り、木製のプレス機も残っている。発酵 槽は大きすぎて使えないので小型のセメントタンクを 導入した。

『ステンレスは発酵時に温度が一気に上がるので駄 目。ゆっくり温度が上がるセメントは酵母の能力を最 大限引き出せる』

パッソピッシャーロの100年樹

畑はエトナの北斜面。今イタリアで最も注目を集めている産地と言えるかも知れない「パッソピシャーロ」地区に位置。 2004 年に購入した所有畑は標高 660m の畑「アル クリア」と標高 1000m を越える畑で「フランク・コーネ リッセン」の隣の畑「バルバベッキ」の 2 つ。

『以前の所有者がケチだったお陰で一切農薬が使われてなかった。葡萄樹は効果的に剪定されていなか ったが、土壌は痛んでいなかった』

「アルクリア」は 25ha の敷地の内 15ha が葡萄畑で ネレッロ・マスカレーゼが 90%。ネレッロ・カプッチョと カタラット、カリカンテが植えられている。

『バルバベッキはフィロキセラも到達していない区画。よってほとんどの樹が自根。標高が高すぎるのでオリ ーヴとリンゴしか育たない』

「バルバベッキ」は標高が 1200m を超えるので湿気 が少ないし、ウィルスも少ない。病気の原因は湿気と ウィルスなので、ここでは病気がほとんど無い。 一切農薬は使用しない。ボルドー液さえも使わない で栽培することが可能だが、極度の乾燥によって自 然発生山火事が度々問題になる。

『1200m の畑では葡萄が完熟するのは 11 月。ゆっくり熟した葡萄は果皮の成分が豊かで、タンニンに 青さがない』

 

1 つの樹から3房だけ

C.R.C のヴィレーヌ氏も[グラーチ]を称賛していて、カ ンティーナを訪問している。シャンシス・ロビンソンもグ ラーチを称賛。

『グラーチは若い造り手だが注目に値する。彼のワインはバローロ、バルバレスコ、もしくはブルゴーニュの ようだ』

シャンシス・ロビンソン エチケットにはエトナ・チルネコ(1000 年以上前から エトナに生息する犬)が描かれている。

『エトナの個性を表現するワインを造るにはエトナの自然を守ることから始めるべき。除草剤や薬品を使 わず畑を維持していく』

更に土地の個性を表すには樹齢が高くなければいけ ない。地中深くまで根を伸ばしていることが重要。

『樹齢が高いので収量は自然と減る。1 つの樹には3~4 房しか収穫できない。更に葡萄樹は水分を吸 い上げる力が弱いので粒も小さくなる』

醸造はシンプル。発酵はセメントタンクで区画毎に始まる。自然酵母のみ。発酵終了後はオーストリア「ス トッキンガー」製の大樽で熟成する。ノンフィルター、ノ ンコラージュ。

『セメントでの発酵と目の細かい大樽で時間をかけ て熟成させることが重要』