ユーグ・ゴドメ

●40年間の自然栽培が育てる強い葡萄●

ヴェルズネイを中心に40区画を所有。全てビオディナミで栽培していて「マルゲ」等優良生産者からの信頼も厚い。 葡萄の力強さが感じさせる数少ないシャンパーニュ。

 

ゴドメ・ペール・エ・フィスが分裂

気温が低く、湿気も多いシャンパーニュではビオディ ナミ栽培は不可能と言われてきた。 そのシャンパーニュで 40 年以上自然栽培のスペシ ャリストとして働き、「マルゲ」等優良生産者から絶大 な信頼を受けてきたのが「ユーグ・ゴドメ」。

『40 年間自然な栽培を続けてきた。2006 年から はビオディナミを導入。それ以前の栽培と考え方は ほとんど変わらない』

「ユーグ」は妹と「ゴドメ・ペール・エ・フィス」を運営し ていたが、栽培・醸造の考え方の違いから決別。 2015 年、妹の「サビーヌ・ゴドメ」と「ユーグ・ゴドメ」に 分裂した。

『妹は畑作業が好きではない。醸造所も畑も分割。 僕達は手作業でのビオディナミ。妹はビオディナミを 止めてしまった。残念だが仕方ない』

彼等はモンターニュ・ド・ランスの「ヴェルズネイ」「ヴ ェルジィ」「ヴィリエ・マルムリィ」「ヴィルドマンジュ」に 40 区画を所有。

所有する 40 区画は斜面の角度や土壌、日照条件 が異なるので異なる品種、クローンを植樹。 別々に醸造することでアッサンブラージュの可能性 を広げている。また、細かく分かれているので雹害、 病気等のリスクも分割できる。

『粘土が強いヴィリエ・マルムリィのシャルドネは官能的。ヴィルドマンジュのムニエは旨み。ヴェルジィ、ヴ ェルズネイのピノ・ノワールは強さを与える』

 

ビオディナミより経験

テロワールを尊重することが造り手の責務で、テロワ ールの将来に責任を感じている。

『だからワイン造りは土から始めるべき。土壌をバク テリアで活性化することが全ての始まり』

葡萄と自然環境のリズムを壊さない事を重視。自然 界のリズムを壊さない為に堆肥や植物、そのオイル をベースとした調剤だけを使用している。

『化学薬品や合成肥料を使わなければ良いという 訳ではない。注意深く観察し、葡萄樹の声を聞き、 意見を交わす事でしか結果は得られない』

彼等の畑仕事は教科書で習ったものではない。40 年間の経験で習得したもの。

『土壌を活性化させる時にイラクサを使って窒素を 補給するが、イラクサはベト病を活性化する側面を 持っている』

湿気の多い季節にイラクサを撒けばベト病を促進す ることになる。彼等はビオディナミの効果と同時にイ ラクサを使ってきた経験から最適のタイミングを選ぶ ことができるのだ。 彼等の葡萄葉は薄い緑。化学肥料を与えられた濃 い緑ではない。葉には白い粉が付着している。 自然調剤は白く残り、化学薬品は透明で見えない のだ。綺麗な畑が自然な訳ではない。

『シャンパーニュには 350 年の歴史がある。今もそ の途中だ。自然と調和したワインを造るべき。私達 はテロワールの将来に責任があるのだから』

 

醸造はバランスをとるだけ

醸造所も妹と分割。近代設備は妹に譲り、彼等の 設備はセメント発酵槽と古いバリックのみ。 品種と区画毎に、できる限り分けて発酵させるので 細かく分かれている。セメント発酵を中心に一部は 木樽で発酵。個性に合わせて選ばれる。

『発酵は自然酵母のみ。マロラクティックも酵母に 任せる。翌年の夏までマロラクティック発酵が続く 時もあるが人為的に止めたりはしない』

畑では葡萄の生育する環境を整えるだけ。それ以 上の介入は行わない。

醸造では収穫した葡萄を自然に発酵させ、最終的 なバランスを取るのが彼等の役割。それ以上の介 入をすればテロワールの表現でなくなってしまう。

『毎週日曜の朝に全ての樽、タンクの試飲をして状 態を感じて理解を深めていく。毎週繰り返すことで、 その年の個性が理解できる』

その後はバトナージュや熟成期間を微調整。アッサ ンブラージュで最終調整をする。

『バトナージュも基本的にはしない。葡萄に力がある から。2016 年のような弱い年はバランスを整える 為に少しだけ行う。後は祈るだけ』

そして彼等は豊富なリザーヴ・ワインを持っている。リ ザーヴ・ワインの使用比率は 60%近く。