ジャン・マリー・バンドック
グラン・クリュ、ブージィの重厚なピノ・ノワール
アイ、アンボネイに挟まれたグラン・クリュ、ブージィ100%の珍しい造り手
5軒の農家が共同で収穫、共同で発酵、アッサンブラージュからそれぞれで行う珍しいスタイル
❖グラン・クリュ・ブージィ村❖
『モンターニュ・ド・ランスの重要なグラン・クリュであるアイ村とアンボネイ村に挟まれて位置するブージィ村。この3つの村が最上のピノ・ノワールを生み出すグラン・クリュ』
この3つの村はピノ・ノワール植樹比率が非常に高く、アンボネイ84%、アイ88%。そしてブージィでは89%がピノ・ノワールという、まさにピノ・ノワールの最適地なのです。
『アイ、アンボネイと、ほぼ同じ大きさの380haの畑があるブージィだが、不幸な事にアイ、アンボネイと違い、大手が多く所有しているのでブージィのワインは非常に少ない』
ブージィの畑の半分近く、180haを大手シャンパーニュ・メゾンが所有しているのと栽培農家も多いので、ブージィ100%でシャンパーニュが造られる事が非常に少ないのです。
『アイ、アンボネイ、ヴェルズネイと同じ、ピノ・ノワール最高のグラン・クリュでありながら、ブージィの葡萄はアッサンブラージュに使われ、単一でボトリングされてこなかった』
メゾン・シャンパーニュではブージィの個性を強調するのではなく、メゾンとしてのスタイルを守る為に、色々な村のワインをアッサンブラージュするのでブージィの個性は消えてしまいます。
『ブージィのピノ・ノワールは隣のアンボネイとも全く違います。アンボネイは赤果実とミネラル、ストラクチャーに優れますが、ブージィは、もっと力強く、重厚。圧倒的な骨格が個性』
その為、ロゼ・シャンパーニュのアッサンブラージュにブージィの肉付きの良いピノ・ノワールの赤ワインを使う造り手は非常に多い。ワインにボリューム感を与えてくれます。
『ブージィの葡萄畑は、アンボネイと異なり完全な南向き斜面。土壌はチョーク質だが、粘土質を多く含有する。この2つの要素が揃っているのはブージィだけ』
東向きのアンボネイは赤系果実で繊細さを持ちますが、コトー・シャンプノワに仕上げてもバランスできません。ブージィはコトー・シャンプノワにしてもバランスできる位に完熟するのです。
『ピノ・ノワールが完熟する事はとても重要。完熟した葡萄でしか得られない要素は多いのです。重厚でワインとしての旨味があり、構成要素の多いシャンパーニュがブージィ』
ジャン・マリー・バンドックは数少ない100%ブージィの造り手。この村に4代続く葡萄栽培農家で村の全てを知り尽くし、ブージィらしさを追求している珍しい造り手です。
❖ブノワ・ライエも所属していた❖
現当主はシルヴァン・バンドック。父親と共に、毎日葡萄畑に出て、葡萄栽培を担当。元々、栽培農家であったので醸造設備は持たず、醸造は共同の設備を使用しています。
『かつてブノワ・ライエも所属していたブージィの小さな生産者協同組合ソシエテ・ヴィニュロンに所属していて、この組合の設備を使ってシャンパーニュを醸造している』
組員は5名という小さな組合。元々、全員が葡萄栽培農家で葡萄の段階で大手に販売していました。勿論、プレス機や醸造設備は持っていませんでした。
『1928年、大手ネゴシャン達が葡萄購入価格を引き下げます。これに対抗し、小さな農家が集まり、販売せずに自分達で協力してシャンパーニュを造り始めた』
葡萄を多く収穫し、安く販売するのではなく、葡萄の質を高め、小さな農家が共同で醸造設備を共有し、醸造する事で高品質シャンパーニュ造りを開始したのです。
『これは農家がシャンパーニュの品質を意識するようになった事を意味します。葡萄栽培から変更し、より良いシャンパーニュ造りが始まったのです』
❖5軒の農家で共同醸造❖
組合員の畑は組合員全員で収穫時期が決められます。区画毎には分けず、収穫のタイミングで分けて圧搾。ステンレスタンクとセメントタンクを併用して発酵させます。
『伝統的コカールでは粗さが出てしまうので、窒素で酸化から守る事が出来る空気圧のソフトプレスで圧搾。4時間かけてピュアで繊細なモストを得る』
発酵は小さなステンレスタンク12台と古いセメントタンクが8台。収穫のタイミングで分けて発酵、熟成。全ての葡萄は100%ブージィのもののみ。
『5軒の農家の畑は同じ収穫時期で収穫の段階で葡萄は混ぜられ、一緒に発酵します。それぞれの農家の畑では分けられず、5軒の農家は葡萄を共有する』
収穫翌年の2月に5軒が集まり、ヴァン・クレールを試飲。それぞれの農家が、それぞれのアッサンブラージュを決定し、それぞれのエチケットでシャンパーニュに仕上げます。
『リザーブワインも合わせて60種類以上の原酒からアッサンブラージュを決め、ティラージュ、瓶内2次発酵を行う。ここからはそれぞれの農家がそれぞれで行う』
お互いに畑仕事から助け合い、醸造設備を共有。醸造技術も共有する事でグラン・クリュ、ブージィでも比較的低価格でブージィらしい個性的な重厚さを味わえるのです。
『ジャン・マリー・バンドックのアッサンブラージュの特徴は100%ブージィは勿論だが、高いリザーブワイン比率。常に50%以上のリザーブワインを使い、複雑味を増している』
リザーブワインが多いと、2次発酵が難しく、発酵不良のリスクが高まるが、ブージィの重厚なピノ・ノワールにリザーブワインの複雑味を加えて重さではなく深さを重要視しています。