クリネッツ
最高格付けメダーナの偉大なワイン
ダリオ・プリンチッチ、ラディコン、ムレチニック等と考えを同じくする
スロヴェニア伝統農業で伝統的ワイン造りを今に残す
❖最高格付けの畑❖
スロヴェニア伝統農業で伝統的ワイン造りを今に残す
❖最高格付けの畑❖
トリエステ湾から広がるフリウリ平野。そこからゴリッツィアまではポンカ土壌の緩やかな丘陵地帯。更に内陸に入るとスロヴェニアの急斜面の入り組んだ丘陵部になります。
『この急こう配のメダーナ地区こそが100年前から最上級の評価を受けていた産地。エチケットになっている政府が古代に制定した葡萄畑の格付けでも最上位になっている』
海底が隆起して形成された地域で、ゴリッツィアよりも古い土壌で複雑。隆起する際に水平からも圧力がかかり、かなり複雑で急こう配の丘陵になっています。
『土壌は始新世の海の堆積物が押し固められたマールと砂が凝固した砂岩層がミルフィーユ状になっていてフリッシュと呼ばれる。砕くと海の化石を多く含む』
年間2,900時間の陽光があり、アドリア海(地中海性気候)の暖かい空気とアルプスからの吹き降ろしの冷涼感がぶつかる場所。葡萄栽培の理想が全て揃っているのです。この地域は世界大戦中にイタリア、ドイツ、クロアチア、ハンガリーに順次占領され、その度に農地は取り上げられ、教育も受けられない難しい時代が続きました。
『第2次世界大戦前、クリネッツはスロヴェニアで最も高品質なワインとして既に有名でウディネやコルモンスのレストランでフリウリのワインより高い価格で売られていた』
第2次世界大戦後、ユーゴスラビアの統治下になると、ワインの販売は禁じられ、1991年まで自由にワインを造ることも、ワインを売る事も許されませんでした。
『ワイン造りが許可される1991年まで、イチジク、モモ、さくらんぼ、オリーヴ等の栽培、豚の飼育で生計を立てます。その畑は今も残されているし、豚の飼育も続けています』
❖銅は使わない❖
クリネッツは1918年設立。現当主アレックスは5代目。弟のウルス、奥さんシモーナと共に野菜栽培、豚の飼育、それらを使った料理を提供するトラットリアの経営も行っています。
『ワイン造りは生活の一部。トラットリアで提供する為に始めた。豚の飼育も野菜も完全無農薬。自分達が食べたい、飲みたいものを造るだけ』
畑はメダーナ周辺に6haを所有。家族だけで管理できる範囲に抑えている。ワイナリーというよりも農家で野菜の畑と豚の飼育場、葡萄畑が混在しています。
『葡萄栽培自体は古くから盛んだった。しかし、イタリアより遅れて農薬が推奨されたこともあり、今でも90%を超える畑は農薬で汚染されている』
有機栽培の造り手はアレックスが知る限りで3軒しか存在しません。国営のワイナリーも残念ながら農薬で汚染されているのが実情。イタリアよりも遅れているのです。
『化学薬品は一切使用しない。ビオディナミでもベト病対策として使われる銅すら使用しない。使うのは自家製コンポストと天然の硫黄や植物のみ』
ベト病にはのこぎり草、除草にはグレープフルーツの種から抽出したオイル。ウドンコ病には海草と自然由来のもの以外使用しない。ホルモン剤さえも使用しません。
❖アカシア、栗、チェリー樽❖
ワイン造りの思想は友人である「ヴァルテル・ムレチニック」や「スタンコ・ラディコン」、そして「ダリオ・プリンチッチ」等と近く、彼等の影響を大きく受けています。スタンコの1周忌食事会でクリネッツのヴェルドゥッツォを飲んだベッペ・リナルディは『真に偉大なワインはいつも赤ワインだが、これは真に偉大。白ワインのバローロだ』と言います。
その後、ダリオのアドバイスもあり、マセラシオン期間を延長。完全発酵での長期樽熟成をした、醸造的にはバローロのような辛口ヴェルドゥッツォを完成させます。
『メダーナは寒暖差が激しいので収穫を遅らせても酸度は落ちない。完璧な成熟まで待って収穫し、成熟した果皮と種子を一緒に発酵させ、アルコール中に存在させる事が大切』
酸度、糖度、凝縮度、フェノール類、全ての要素で葡萄のポテンシャルが高いのでワインは若いうちは強過ぎて近寄り難いほどの高貴さを持っています。
発酵は野生酵母のみで10~30日間マセラシオン。1度移し替えし、良質の澱だけ残して、色々なタイプの古樽に入れて熟成させるのが、この地方の伝統です。
『使用する樽はオーク樽ではなく、アカシア、栗、チェリー、桑の樽と色々。この地方ではオーク樽は高価で買うことが出来なかったので色々な樽が発達した』
古代から葡萄にとって理想とされたメダーナ。自然農法のエネルギー溢れる葡萄を伝統的醸造で醸し、長く樽熟成したクリネッツ。圧倒的存在感はイタリアワインを凌駕しています。
『メダーナの大きな骨格と凝縮度は他にはない個性。その個性を活かしたワインはダリオよりも力強く、筋肉質でミネラリー。初めて飲む人は驚くでしょう』