ラ・クロッタ・ディ・ヴィニュロン
●イタリアで最も長い歴史を持つ『ミュスカ』●
14世紀からの伝統ワイン『シャンバーヴ・ミュスカ』。甘い香としっかりとした厚みは前菜から肉料理まで幅広く合わ せられる。このワインの伝統を守り続けている協同組合。
1980年設立の協同組合
イタリア最西端に位置する「ヴァッレ・ダオスタ」。アルプス山脈の麓。 フランス、スイスと国境で接している。主要産業はス キーや登山などの観光。ワインの生産量はイタリア全州で最も少ない。
『中世からフランス貿易の通り道だったのでワインが造られていた。当時の貴族の好みは甘口。ミュス カ種からデザートワインが造られていた』
葡萄畑はアルプス山脈の南向き斜面の岩肌に段々畑のように造られ、標高は500~850m。 「ラ・クロッタ・ヴィニュロン」はアオスタの中心部シャ ンバーヴの街の中心に位置。
『1980 年に 25 名で結成された生産者協同組合。 中世からの歴史あるシャンバーヴ・ミュスカの伝統を守り続けている』
今では 70 名まで組合員は増え、自社畑も増えてい る。醸造所の他にワインショップ、町の皆が集うバー ル、トラットリアも運営する町の中心的存在。 醸造責任者は地元出身の「アンドレア」。葡萄栽培 農家の出身で醸造学を学んだ後、このカンティーナ で働いている。 彼が力を入れているのが栽培農家の意識改革。高 品質葡萄を高く買い取る仕組みを整え、重量で価 格を決めることを中止した。
『質の高い葡萄を造ることを目指している。アルベ レッロ仕立の葡萄や樹齢の高い樹は重宝する』
最も少ない降雨量
東西に連なる山々の南向き斜面のみに葡萄畑が作 られている。山が湾のように扇形になっている場所 が温かい空気がたまる。 そこが彼等にとって最も優れた畑。パッチワークのよ うに栽培条件に適した場所だけが畑に開墾されてい る。
『シャンバーヴはイタリアで最も降雨量が少ない。年 間 500mm 程度しか降らないので、細菌、カビの繁 殖がない。防腐剤等も必要ない』
日本の 1/4 以下の降水量。極度の乾燥のお陰でベ ト病やウドンコ病の心配もない。よってボルドー液さえ もそれ程必要としない。
『シャンバーヴは毎日晴れるので日照量は多く、夏 場の気温はトスカーナとほぼ同じ位暑い。しかし、ア ルプスの麓なので夜間は冷え込む』
夏の昼夜の寒暖差は 30 度にもなる。激しい寒暖差 が葡萄にストレスを与え、厳しい環境に耐える為に 果皮中にアントシアニンやタンニン、そして果汁に糖 分を蓄える。 葡萄の生育サイクルも独特で芽吹きから結実まで はゆっくりと進み、夏場の高温で一気に熟度を高め、 その後はゆっくりと複雑味を高めていく。
シャンバーヴ・ミュスカ
「シャンバーヴ」では独特のワイン文化が育っている。 例えば「ピノ・ノワール」から造られる白ワイン。
『ここではピノ・ノワールの糖度が上らないことが多 かったので酸を活かして白ワインを造った』
ステンレスタンクで12度程度の低温下で発酵。その まま 5 ヶ月間熟成させてからボトリングされる。
『アオスタは早くにブルゴーニュからピノ・ノワールが伝わった。ブルゴーニュのクローンが今も大切に残 されている』
最も注目すべきは「ミュスカ」。甘口だけでなく辛口のミュスカも造られていて、地元では前菜からメインの肉料理、そしてデザートまで「ミュスカ」で通すこと もある。
『ミュスカは乾燥を好む。アフリカでも育つ品種。乾 燥するシャンバーヴに適している。乾燥が葡萄を凝 縮させ、強い芳香を得る』
メロンやパッションフルーツのようなフレッシュな香だけで終わらない。胡椒、ナツメグ、東洋スパイスのよ うなエキゾチックな香がシャンバーヴの特徴。
『14 世紀にまで遡ると言われるシャンバーヴのミュ スカ。この地域の伝統を守ることが協同組合の大き な役割』