ラ・モナチェスカ

山の塩田のミネラルを活かしたもう1つのヴェルディッキオ


高い標高、大陸性気候、元塩田の土壌、海の影響を受けない、もう1つのヴェルディッキオ
マテリカの個性を最大化する為にステンレスタンクのみで仕上げている


❖もう1つのヴェルディッキオ


ロンバルディア出身のベネディクト派の僧侶が旅の途中、マルケに立ち寄り、マテリカの村の郊外の丘の上に教会を建て、長く滞在。モナチェスカと名付けました。
『周辺を見下ろす小さな丘の上にあり、日照に優れ、葡萄栽培に最適であり、その頃から少し葡萄栽培も行われていたよう。僧侶はいつでも良い場所を知っている』
1966年、カシミーノ・チフォラがこの丘を買取り、丘の斜面に葡萄を植樹。醸造所を建設します。地名をとってラ・モナチェスカと名付けられました。
『マテリカはカステリ・ディ・イエジより古い歴史がある。昔から優れた産地と認識されていたが、山に囲まれているので交通の便が悪く、流通できなかった』
初ヴィンテージは1973年。1982年には現当主、アルドがワイン造りに参加し、醸造面を大きく改善します。これを機にワイン造りは一気に質に向かいます。
『マテリカは内陸で標高が高いので冷涼ながら日照量は多く、乾燥している。土壌のミネラルも多いので長期熟成向きのワインを造りたかった』
海の影響と標高の低さから温暖なカステリ・ディ・イエジ。土壌は粘土が強くなります。マテリカは海の影響はなく、標高が高いので冷涼。土壌のミネラルは圧倒的に多いのです。
『カステリ・ディ・イエジは地中海性気候で湿気が多い。マテリカは大陸性気候で山の影響で雨が少なく乾燥している。同じヴェルディッキオでも対照的な産地と言える』
標高は400~500mでカステリ・ディ・イエジ(250m)の2倍の高さ。日照量はどちらも変わらないので夜間の冷え込みが強いマテリカの葡萄は凝縮するのです。シッビリーニ山と丘に囲まれ、コロッセオ状になっているので日中の気温は高い。夜間はアルプスからの風で葡萄畑は一気に冷やされ、夏場でも気温差は20度を超えます。
『1967年にDOCに昇格して50年以上が経過した。マテリカの特殊性は幅広く知られるようになったし、その熟成ポテンシャルも注目されている』
熟成に必要な酒質の強さ、酸度、アルコール度数の高さの全てを持っているだけに、イタリアの白ワインで最も熟成ポテンシャルが高いワインの1つとも言われています。


❖塩味のワイン


マテリカは土壌の面でも個性的です。山間部で特に産業が無かったマテリカの唯一の産業だったのが塩でした。元々、海だった為にミネラルと塩が多く含まれていたのです。
『畑は元々、塩田として使われていたという記録がある。表土はグレーの粘板岩だがマンガン等のミネラルを多く含んでいるので葡萄根はミネラルを含んだ水を吸い上げる』
シャブリのヨード感にも似ている独特のミネラル。塩っ気は土壌のミネラルに由来しています。これはカステリ・ディ・イエジには感じない、マテリカだけの個性なのです。
『平均樹齢は35年。高樹齢から密度感。土壌からミネラル。南斜面から強い果実。標高の高さから高い酸度。そして、昼夜の温度差からストラクチャーを得る』
ヴェルディッキオはマテリカ付近で野生種の葡萄として森の中で自生していました。15世紀に入り、マテリカの公証人がイタリアで初めてヴェルディッキオを登録したのです。
『ヴェルディッキオの起源はマテリカ。ここからマルケ全域、ラッツィオに広がっていった。ヴェネトに伝わり、ソアヴェの補助品種となったトレビアーノ・ソアヴェも同じ品種』
ヴェルディッキオはアーモンドやアニスの香。ふくよかな果実とミネラルが特徴的ですが、マテリカは熟成すると、リースリングに似たペトロール香が出てきます。


❖マテリカ最高峰


平均樹齢は35年。古い区画は樹齢50年を超します。10年を超えると収量が減るので、すぐに植え替えられてしまうヴェルディッキオで、この樹齢は異常な高さなのです。
『高樹齢の葡萄樹は値を10m以上地下に伸ばすので、ミネラル豊富な岩盤層まで到達する。乾燥するマテリカで生き延びる為にも、ミネラルを得る為にも高樹齢であるべき』
発酵は小型ステンレスタンクで行い、発酵終了後に何度か移し替えを行い自然に清澄。熟成は4,000リットルの大型ステンレスタンクで完結。
『ヴェルディッキオは多くの要素を持っている。足りない要素はないのです。だから、木樽は一切使用しません。品種、そして土地の味を素直に感じるはず』
収穫はカステリ・ディ・イエジが9月初旬なのに対してマテリカは10月初旬。ゆっくりと成熟した葡萄は緑から黄色味を帯び、香味成分が成熟しています。

■ヴェルディッキオ・マテリカ・リゼルヴァ・ミルム
『熟すのが遅い葡萄は樹に残し、10月最終週まで収穫を遅らせ過熟気味にする。これを長くマセラシオンして辛口に仕上げたワインがリゼルヴァ・ミルム。マテリカ最高峰のワイン』
ダイレクトプレスで搾り、モストを酸化防止剤なしで、ステンレスタンクで発酵。20度以下にキープ。熟成はステンレスタンクで18ヶ月間。その後、瓶熟成6ヶ月。ねっとりとした果実は密度が濃く、蜜のよう。甘い香の後に強烈なミネラル感が出てきます。甘い香とオイリーな感触とは対照的に味わいは非常にドライ。まさにマテリカの味わいです。