ラ・ライア

●ビオディナミ+現代醸造で進化する『ガヴィ』●

低迷するガヴィの中で一気に評価を挙げている造り手。循環型エコシステムの中でビオディナミを実践。新しい形のカンティーナとして精力的に品質向上に取り組んでいる。

ファッソーネ牛と有機栽培

2007 年、イタリアでは 38 カンティーナしか取得していない自然環境保全認証団体「デメテル」の認証を取得した「ラ・ライア」。 オーナー「ジョルジョ・ロッシ・カルロ」が130ha の大農園を取得したのが 2003 年。以降、ビオディナミを実践し、古代「モノココ麦」の復活、「ファッソーネ牛」の放牧、栗、アカシアニワトコの森、そしてワイン造りを行ってきた。

『有機野菜やファッソーネ牛の飼育でこの地域を復興させたい。その為に自然と共生する教育を行うシュタイナー学校も運営している』

畑ではビオディナミの思想に基づき、銅と硫黄、そしてプレパラシオンだけしか使わない。

『ワイン造りは農業の 1 部として行っている。ガヴィは今や廃れてしまった。収量を重視した栽培で質を落としたからだ。ビオディナミで収量を落とし、健全なコルテーゼを収穫することが重要』

地元の伝統を復活させるのが彼等の目的。彼等の新しいカンティーナは「ピセ」と呼ばれるこの地域の伝統建築が採用されている。

『地元の粘土と小石、干し草を使ったピセと呼ばれる伝統的な土壁。伝統を絶やさない為に建築もワイン造りも進化しなくてはいけない』

 

醸造技術は進化する

『コルテーゼは酸化に弱い品種。最適なタイミングで収穫し、迅速に醸造しないとコルテーゼ本来の香は表現できない』

 植樹率4,500 本/ha。収穫はベースの「ガヴィ」も全て手作業で行われる。果皮が破れると酸化が始まるのでコルテーゼは手収穫しかできない。 酸化によって品種由来の香は無くなってしまう。朝の気温の低い時間帯に収穫、温度を上げずに圧搾。ステンレスタンクに投入される。この段階で亜硫酸は使わない。

『コルテーゼは低めの発酵温度が重要。香が飛ばないようにする。発酵後は 3 ケ月シュール・リー。長すぎるとコルテーゼの香をマスクしてしまう』

発酵は 17 度から始め徐々に上げていく。28 度を超えることはない。ヴィンテージにもよるが 20~25 日 程度の発酵期間。 シュール・リー後は1回デキャンティングして粗いフィルターに通してボトリング。窒素を使って酸素と触れ合わないでボトリングできるようになっている。

『一般的なガヴィの平均樹齢は 15 年程度。僕等の畑は最も古い樹齢は 70 年を超す。一部には自根のコルテーゼも残っている』

樹齢 60 年の樹からは「ガヴィ・リゼルヴァ」が造られる。「ガヴィ」でリゼルヴァを造るのは非常に珍しいが、 古い樹ならではのスモークのような香が楽しめる。

 

ガヴィの可能性

ピエモンテを代表する白ワインなのに一時期のソアヴェのように衰退してしまった「ガヴィ」。組合による買取り葡萄で造られた低品質大量生産「ガヴィ」は 同じワインで色々なラベルで販売されている。

『コルテーゼは酸化に弱い品種なので、そもそも大量生産に向かない。大量生産を可能にするのが亜硫酸だった』

機械収穫をすると腐敗果は混じってしまう。葡萄果も破裂するので果汁が流れ出し、酸化が始まる。よって亜硫酸を使ってバクテリアの繁殖や酸化を止めなくてはいけない。

『同時に亜硫酸はコルテーゼの品種由来の香を奪ってしまう。ガヴィの個性は表現できないのでガヴィの評価は下がっていった』

彼等の「ガヴィ」はコルテーゼの香がある。

■ガヴィ・リゼルヴァ 「マドンニーナ」の丘の上にある樹齢 70 年を超す畑の葡萄のみ。発酵後、6ヶ月ステンレスタンクで熟成。瓶詰め後、6 ヶ月瓶熟成。

『リゼルヴァを造っている造り手は今ではほとんどいない。樽には入れていないが樽、ナッツのような香 が出てくる』

■ガヴィ・ピセ標高 400m の「ラ・カッシネッタ」と呼ばれる樹齢 70 年を超す畑。自根のコルテーゼも含まれる。

『収穫は一番遅く 9 月第 2 週。完璧に熟した葡萄のみを低温発酵。12 ヶ月間シュール・リー。12 ヶ月間熟成した後に出荷』