ラ・トゥール・デュ・ボン

●ムールヴェードルの個性を活かしたバンドール●

80年代にティエリー・ピュズラが醸造していたバンドール。1990年から有機栽培。2007年にはビオディナミを導 入。グルナッシュとのアッサンブラージュで上品でまとまったバンドールを目指す。

神の塔

広大なコート・ド・プロヴァンスの内陸部ル・カステッレ 村の標高 200m の高台に位置するのが「ラ・トゥー ル・デュ・ボン」。

『神の塔という意味のワイナリー名はその名の通り、 地域の安全を見守る塔があったことに由来してい て今でもその塔が残っている』

12ha の畑はバンドールの北東部に位置し、小石を 多く含む粘土石灰岩土壌で一部が鉄を含む赤土、 砂質が強い区画もある複雑。 しかし、土壌以上にバンドールの最も重要な特徴は 降雨量の少なさと日照量の多さ。

『年間降雨量は 500ml 程度。フランスで最も少な いとも言われる。日照量は 3,000 時間以上で 1 年 中ミストラルが吹く』

葡萄の生育にとって理想的な環境で降雨量は少な いが、地下に海につながる水脈があり、葡萄樹の水 分ストレスは適度になっている。 日照量が多く、ミストラル(乾燥した風)もあるので乾 燥していて、カビ害はほとんど存在しないので圧倒 的に葡萄樹の病気は少ない。

『約 8,000 年前のサントニアン期に由来する石灰 岩が露出していてムールヴェードルに適度なストレ スを与える痩せた土壌』



ムールヴェードル

カタランに起源を持つムールヴェードルを主要品種 とする唯一のAOCがバンドールで、この品種の最適 地と言って良い。

『日照が少ないと熟すことができな晩熟品種で樹勢 は強いが葉の数が少ない。土壌中にカリウムやマグ ネシウムがないと成熟しない』

日照量が3,000時間を超えるバンドール以外ではヴ ェジタルな風味を出してしまう気難しい品種だが、こ こでは高貴な味わいを作ってくれる。

『ベト病には強いがダニには弱く、収量は年によっ て大きく異なる。収量をぎりぎりまで抑えることでし か高品質なワインは得られない』

南らしいガリーヴ、オリーブ、ローズマリーのニュアン スが出る位に熟すことができればバンドールにしかな い偉大なムールヴェードルの個性になる。 ラ・トゥール・デュ・ボンではムールヴェードルを 50%、 そして 25%グルナッシュ、残りはサンソー、カリニャン、 ロール、クラレットを植樹している。


ティエリー・ピュズラもここで

現当主は「アニエス・アンリ」。1968 年に両親がワイ ナリーを買い取り、1990 年から彼女が引き継ぎ、一 気に品質を高めた。

『保守的で変化がゆっくりなバンドールで 1990 年 から有機栽培。80 年代には「ティエリー・ピュズラ」 の才能を見出し、醸造責任者として雇っていた』

今では畑のまわりに森林を隣接して残すことにより生 物多様性を維持し、葡萄樹だかの畑の、ある意味 異常な状態を改善している。

『更に 2015 年から「エリザベッタ・フォラドーリ」の協 力を得てムールヴェードルのアンフォラ発酵、6 ヶ月 間マセラシオンも始めてしまった』

2007年からはアニエス自身が醸造責任者となり、ビ オディナミだけでなく、自然な醸造にも取り組んでい て、最近の彼女のワインは躍動感が出てきた。

『醸造は伝統的。全ての品種をほぼ同時に収穫し、 除梗。同じセメントタンクで品種毎ではなく、全品種 一緒に発酵させる』

酵母は野生酵母のみ。発酵期間も長く、マセラシオ ンは 2 週間程度。熟成はスラヴォニア産大樽、オー ストリア産フードルと色々な樽を使用する。 全ての樽は香の強いものではなく、余計な化粧を嫌 っている。18 ヶ月の熟成を経て無濾過、無清澄で ボトリング。

『セパージュは通常の造り手よりグルナッシュを多く 使っているので少しフレッシュで引き締まった印象。 そして若い内から開きやすいのが特徴』