ラ・カ・ノヴァ
唯一残る農家の地酒『バルバレスコ』
❖農家のバルバレスコ❖
「バルバレスコ」の町に近い「モンテステファノ」の丘に12haの畑を所有する「ラ・カ・ノヴァ」。代々バルバレスコに続く農家で野菜、家畜の飼育と一緒に葡萄栽培も行ってきた。現当主「マルコ・ロッカ」の父親の代からボトリングを開始し、今ではワイン造りのみとなっている。
『今ではバルバレスコは有名産地になり、現代的で高価なワインになってしまった。僕等が造っているのは昔の地酒としてのバルバレスコ』
「新しい家」という名のカンティーナ名だが家は古く、自宅の地下部分が醸造所になっている。
醸造所には50年前から使っている垂直式プレス機や、同じく50年前から使っているスロヴェニア産大樽が並んでいる。1人乗りの小型トラクター1台は所有しているが、その他は昔ながらの木製の鍬や鋼の鋏などが現役で使われている。
『農民は鋏で葡萄を整形することで、その樹の健康状態を知った。電動カッターでは葡萄樹の健康状態を知ることはできない』
科学的なものを極力排除し、雑草が青々と茂った健康的な畑。山道に手製の木の看板が掲げられているが朽ち果てている。そこが醸造所だとは誰も気が付かない。地元では昔ながらの造り手として有名だが、輸出をしていなかったので海外で名前を聞くことはない。ホームページもフェイスブックもない。
『2008年ガンベロ・ロッソで3ビッケーレを獲得したことで一気に注目を浴びた』
以前は5ヴィンテージもストックがあったが、今では最新ヴィンテージもすぐに売り切れてしまう。ワインはふくよかな果実が素直に感じられる。シリアスさや緊張感のあるワインではなく、まさに田舎の地酒的な味わい。
❖温度管理さえしない発酵❖
セラーではこの地方の伝統を守り、現代的な技術は一切排除される。
『発酵槽も熟成槽もただの容器。ここでは伝統的に大樽が使われてきた。何の不都合もないので変えようと思ったこともない』
発酵槽は温度管理機能も付いていないステンレスタンクのみ。熟成は3,000リットル以上の色々な大樽が並んでいる。特に拘りはなく、父親が使っていたものと廃業した造り手から買い取ったものを使っている。圧搾機も木製の昔ながらのもの。全く近代醸造技術を感じさせない農家の醸造所。電気が通っているのは照明のみ。勿論、「バリック」も「ロータリーファーメンター」も存在しない。30年前と何も変わらない醸造所。
❖伝統の畑モンテステファノ❖
『僕等は醸造家ではなくて農民。だから醸造でワインの品質を上げることはできない。畑で健全な葡萄を造ることでワインの質を上げる』
「ビオディナミ」はよく知らない。全く興味がない様子。伝統と経験から判断し、防カビには銅を使うなど科学的なものはできる限り排除している。
『防カビ剤は葡萄の果皮を弱くするが、銅は葡萄の皮を強くする。だから少量使う。収穫前の3ヶ月前からは一切使用しない』
畑は自宅の周辺。丘の頂上付近に所有。「モンテステファノ」は貴重な畑でバルバレスコのエリア内で最も石灰質比率が高い畑と言われている。表土は白く石灰含有量の多さが解る。粘土が強く、保水性に優れている。暑い夏も葡萄が過度のストレスを感じることも、焼けてしまうこともない。
『モンテステファノは凝縮度が高い。タンニン量は多いが果実が強いので乾いたタンニンを強く感じることはない。太陽を感じるバルバレスコ』