レ・カニエッテ
●最南端リパトランソーネの『ロッソ・ピチェーノ』●
沿岸部の平野で造られるロッソ・ピチェーノがほとんどだが、レ・カニエッテは唯一認可されている内陸部リパトランソ ーネに畑を所有し、量では無く質を重視したワイン造りを行っている。
ロッソ・ピチェーノ唯一の石灰土壌
1960 年代「ラファエル・ヴァニョーニ」がこの地で葡 萄も含む農業を開始したのが「レ・カニエッテ」の始ま り。その時に購入した建物が「レ・カニエッテ」と呼ば れていた。 1990 年代に入り、息子「ジョヴァンニ」が加入。古い カンティーナを改装。昔のセメントタンクなどは活かし ながら理想的な環境を整えていった。
『畑は 3 代に渡って 1 度も薬剤が使われていなかっ たので健康的だった。あとは収量の制限など技術と セラーの衛生の確保だけだった』
ジョヴァンニは荒廃した古い畑を積極的に購入し、古 い樹を再生していく。今では 20ha を所有。内 16ha が葡萄畑で残りはオリーヴの樹と森。 彼等の畑は広大な「ロッソ・ピチェーノ」エリアの最南 端。「ロッソ・ピチェーノ」はほとんどが海岸沿いの平地 で造られるが、彼等は内陸部の丘陵部「リパトランソ ーネ」に位置。海から 12km 離れる山間部。
『標高は 430m。ロッソ・ピチェーノで最も高い。500 万年前の鮮新世に起源を持つ古い土壌で海底の 堆積物が凝固した土壌でミネラルが豊富』
海岸沿いの平野部と違い、山の影響を受ける。山風 が 1 年中吹き下ろすので夏も気温はあまり上がらな い。マルケでは珍しく雪も降る。
『石灰岩盤の影響を受けるロッソ・ピチェーノはリパト ランソーネだけ。濃厚さではないミネラルを基調にし た骨格のあるワインに仕上がる』
更に PH が低い土壌なので酸度を確保できるのも「リ パトランソーネ」の特徴。果実感がありながら、北のワ インのような硬質感がある。
先代から続く自然農法
畑では「ジョヴァンニ」の祖父の代から 1 度も化学薬 品が使われていない。父親の代からは有機栽培が 実践されている。
『リパトランソーネは田舎の産地。最新の栽培や醸 造は導入されなかった。だから除草剤さえ使わずに 健全な土壌が守られている』
彼等はこの地の自然の豊かさを後世に残していく為 に循環型農業を目指している。
『有機認証 CCPB も取得。有機栽培は勿論だが、自 然環境を残し共存していくことを意識している』
「リパトランソーネ」は痩せた土壌なので収量は自然と 落ちてしまう。平野部に比べて厳しい環境。 その為、葡萄栽培を放棄してしまう農家も多く、荒廃 した古い畑が残されている。
『グルナッシュの一種であるボルド種が植えられた畑 も再生した。樹齢は 150 年。勿論、自根だった。こ ういう畑がまだ残っている』
私はガイア、ルクレッツィアじゃない
彼等のワインは赤白共に長熟タイプ。この土地の特 性を活かしている。
■ペコリーノ・ヴェロニカ 砂質が強い畑のカベルネを台木にして「ペコリーノ」を 植樹。香を大切にしたワイン。
『砂地のペコリーノは香が特徴的。収穫後 0 度で 1 日冷やして低温発酵することで、その香をワインにし っかり活かすことができる』
■ペコリーノ・イオソノガイアノンソノルクレッツィア 「ペコリーノ」最良のワインと称賛される。変わったワイ ン名は 2 人の娘の名前が使われている。 次女の名前をつけた「ルクレッツィア」というワインを 造ったら訪問客が長女の「ガイア」を「ルクレッツィア」 と何度も間違えた。
『その時の彼女の言葉「私はガイアよ!ルクレッツィア じゃないわ!」をワイン名にした』
■ロッソ・ピチェーノ・モッレローネ 70%モンテプルチャーノ、30%サンジョヴェーゼ。「パ ッジョーレ」区画の葡萄のみ。
『最良の区画。マロラクティックから古樽で行い 24 カ月熟成。1 年瓶内熟成後出荷。果実と土壌からく る硬質感がバランスする』