ルイ・ニケーズ

ドン・ペリニヨンが眠るオーヴィレ村の個性


ラファエル・ベレッシュ、ラエルト・フレールのオーレリアンの親友が遂に始動
コート・デ・ブラン、モンターニュ・ド・ランス、ヴァレ・ド・ラ・マルヌがぶつかり合うオーヴィレ村


❖オーヴィレ村のピノ・ノワール

シャンパーニュの中心、エペルネ。エペルネの6km北にある小さな村がオーヴィレ。ドンペリニョン・ロゼは、この村の葡萄を中心に造られています。
『コート・デ・ブラン、モンターニュ・ド・ランス、ヴァレ・ド・ラ・マルヌがぶつかり合う地点がオーヴィレ村。3種の異なる土壌が入り組んでいるのでシャンパーニュの全てがある』
修道士ドン・ペリニョンはオーヴィレ村に住み、シャンパーニュ全土のテロワールを理解し、その特徴をアッサンブラージュする事で味わいを造る事を初めて行った人物でした。
『ドン・ペリニョンはオーヴィレ村の教会に埋葬された。彼はオーヴィレ村の優位性を説き、ダイレクトプレスとアッサンブラージュの技法を定着させた』
オーヴィレ村はチョーク質(コート・デ・ブラン)と石灰質(モンターニュ・ド・ランス)、粘土質(ヴァレ・ド・ラマルヌ)がモザイク状に入り組んでいる特殊な村。
『シャルドネはチョーク質か石灰の強い区画。ピノ・ノワールはシレックス、シスト、粘土石灰の混合土壌で比較的暖かい区画。ムニエは石灰比率の低い粘土質に植樹』
ルイ・ニケーズの所有畑は9.3haで72ヶ所のパーセルに分かれています。そのほぼ全てがオーヴィレ村(一部シュイィ)で平均樹齢は35年以上で非常に充実しています。
『オーヴィレ村の畑はコロッセオ状になっているので上部の急斜面で日照の多い区画にピノ・ノワール。下部の日照の少ない区画にシャルドネかムニエを植えている』

❖ベレッシュ、ラエルト・フレール

オーヴィレ村の中心にセラーを持つルイ・ニケーズ。この村に4世代続く地元に根差した造り手で、海外輸出もせず、ほぼ全ては地元消費されていました。
娘、ロールは醸造学校に進学。そこでクレモンと出会い、結婚。2008年にはクレモンとロールがワイナリーに加入。父親と共に働き始めます。
『加入前にクレモンはジャック・セロス、マイィ・グランクリュで働きセロスで酸化的醸造とビオディナミ。マイィではボトリングのタイミングとドサージュを担当し、学んだ』
醸造学校の同級生にはラファエル(ベレッシュ)とオーレリアン(ラエルト・フレール)がいて皆、ワイナリーの跡継ぎに生まれているが、クレモンは違いました。
『ルイ・ニケーズに嫁ぎ、2008年から義父のアシスタントとして働く。自分のワイン造りではなく、義父のワイン。2012年から義父が引退し、自分達のワイン造りを開始した』
親友が親の後を継ぎ、世界的注目を浴びる中、義父のアシスタントとして自分を出さずに過ごしてきたクレモンですが、2012年以降、一気に改革を進めていきます。

❖オーヴィレ産オーク樽熟成

『畑での一切の化学薬品の使用を中止。仕立を変更し、樹勢を抑え、収量を下げます。葡萄の成熟度を最重要視して、未熟な葡萄では表現できないワインを目指す』
区画毎の土壌特性、気候に合った品種への植え替えを薦め、区画毎の個性を尊重。葡萄自体の強さを実現する為に収穫を遅らせ、成熟した葡萄を得ています。
『伝統的コカールは残すが、大きなステンレスタンクから小さな300-500Lの小型ステンレスタンクを15個導入し、区画毎に発酵、熟成できるように変更』
区画毎に収穫し、区画毎に醸造する事で区画毎の個性を経験し、学ぶ事が可能になります。これによって区画毎に何が足りないか、状態が良いのか悪いのかが理解できるのです。
『区画毎の個性を最大化しアッサンブラージュする事でオーヴィレのテロワールを最大化させる。オーヴィレの山のオークを伐採してバリックを作り、それで熟成させる』
オーヴィレのオーク樽は少し癖があるのでピノ・ノワールの熟成に使用。力強く垂直性のあるピノ・ノワールに少しふくよかさを与え、よりバランスのとれたワインになる。
『シャンパーニュはアッサンブラージュのワイン。アッサンブラージュで複雑性を出し、バランスを作る。ドサージュも同じで、状況によって変えるべき。ノン・ドサージュが最高ではない』
近年のブリュット・ナチュールの流行には懐疑的。シャンパーニュとしてのバランスをとる為に必要だったからドサージュという伝統が生まれたのだから悪い事ではないはず。
『ノン・マロラクティックのワインも使い、酸度は常に高い状態なのだから酸度と糖度のバランスは考えなくてはいけない。5g/Lから8g/Lのドサージュでバランスを見つける』
比較的多めのドサージュでワインおしての偉大さよりも、味わいのバランスを重要視している。ボトリング・ロットによってもドサージュ量は微妙に調整しています。
■ノワール・プルミエ・クリュ
オーヴィレ村のマッサルセレクションで増やした古樹のピノ・ノワールのみ。2006年からのソレラを30%。残りの70%はノン・マロラクティックの最新ヴィンテージ。
『熟成は50%オーヴィレ村のオーク樽と50%スエンレスタンクで行い、ミュズレは使わず、伝統的麻紐を使ってコルクをとめている。オーヴィレの伝統へのオマージュ』