マルク・クライデンヴァイス

オレンジ、酸化防止剤無添加、混植混醸、ニーム、進化する老舗

偉大な父親、マルクの後を継ぎ、より自然なワイン造りを推し進めるアントワンヌ
独自の解釈でアルザスの枠に捉われないワイン造り

 

❖最高評価★★★

『フランスで最も権威のあるワインガイド、メイユール・ヴァン・ド・フランス2023年度版で★★★を獲得。名実共にアルザスを代表する造り手と認められた』
アルザスの中でも最も古い家系の1つで300年以上の歴史を持つマルク・クライデンヴァイス。その歴史は修道院の畑をグレッセール家が購入した事から始まっています。
『アンドロウ修道院が所有していた葡萄畑の一部を引継ぎ、葡萄栽培農家として始まった。1850年代には、この地域で初めてワイン醸造、瓶詰めを開始した』
1948年にはデニス・グレッセールとルネ・クライデンヴァイス家が結婚したことでドメーヌ・クライデンヴァイスとなり、アンドロウ村は彼等を中心に発展していきました。本拠地はライン川下流、バ・ラン地区のアンドロウ。この村の周辺に13haの葡萄畑を所有。バ・ランの優良畑はほぼ全てアンドロウ周辺に位置しています。
『オー・ランはヴォージュ山脈の高い位置にあり、強固なワインを産む。バ・ランは標高が低いが、アンドロウ周辺は地形が入り組んでいて複雑なので複雑性がある』
アンドロウは丘が入り組んでいて地形が複雑。隆起した丘は土壌も複雑でテロワールがある。オー・ランにはない繊細さ、複雑さを得る事ができる。
『1999年にはコスティエール・ド・ニームに16haの畑を購入。アルザス同様にビオディナミを導入。収量も40hl/haに抑え、ニームとしては異例の上品さを感じさせるワインを目指す』
現当主は13代目のマルク・クライデンヴァイスだが、1990年から加わった兄、マンフレッドがローヌ。弟、アントワンヌがアルザスを担当しています。
『マンフレッドは畑の専門家でビオディナミを担当。醸造は2004年から加わったアントワンヌが専門でアルザスを担当。ニームは父、マルクが担当している』
マルクの時代の伝統的アルザスワインを踏襲しながら、よりナチュラルで軽やかなスタイルで酸化防止剤無添加のルナ・ボワール・シリーズ(買い葡萄)も開始。常に進化しています。


❖本当の自然なワインとは

マルク・クライデンヴァイスの歴史で最も大きな変革は1971年、23歳の若さでドメーヌを引き継いだマルクによってもたらされます。当時のアルザスでは衝撃的でした。
『1984年、畑毎の個性を際立たせることを目的に有機栽培を導入。更に、収量を半分程度、40hl/ha以下にまで落とす。1989年にはアルザスで初めてビオディナミを導入』
畑ではビオディナミ調剤と独自のホメオパシーのみで病気、害虫に対応。また、できる限り森を残し、自然と葡萄樹を共存させ、生物多様性を実現しています。
『特にグラン・クリュは森と接している。葡萄樹は他の植物の影響を受け、虫や動物にも影響されることで生命力を強める。生命力の強い葡萄樹の果実は力強い』
その年の個性は葡萄樹だけではなく、その他の植物や動物も含めた自然環境に影響されて変わる。それこそが本来の自然なワイン。そんなワインからは自然の癒しが感じられます。
『急斜面なので機械が入れないので全ての畑の耕作は馬で行われる。馬で耕作し、馬の糞を使用してコンポストを作って畑に撒く。何も無駄がない循環型農業が理想』
『土壌は複雑で14種類に分類できる。最も多いシストは色々な色がある。花崗岩が隆起する際に青色シストを熱で焦がしたのが黒色シスト』
基本的には酸性土壌で花崗岩は苦味やストラクチャーを与えるのでピノ・ブランやオーセロワを植えます。シストにはリースリング、ピノ・グリの相性が良い。
■グラン・クリュ・カステルベルグ
典型的黒いシスト。アンドロウで一番標高の高い入り組んだ丘の上の段々畑。モスト段階では苦く、飲み難い位ミネラルが豊富。6人しか所有者がおらず、水分が少ないので凝縮します。
■グラン・クリュ・ヴィヴェルスベルグ
カステルベルグに隣接する南東向き斜面で少し緩やかな斜度。珍しいピンク色(酸化)の砂岩で下層は粘土。砂岩は強固な酸とテンションをワインに与えてくれます。
■グラン・クリュ・メンヒルベルグ
泥灰土と砂岩の混合土壌で町の下部に位置。ピノ・グリに力強さと構成力を与える。1097年からベネディクト派修道院がワインを造っていた歴史的畑。最も早く収穫される畑。
■クロ・デュ・ヴァル・デレオン
マルクが89年に開墾した畑でモーゼルと同じ青いシスト。3人しか所有者がいない。森に囲まれているので冷涼で果実ではなくミネラルのワイン。リースリングとピノ・グリを植樹。最も遅い収穫。


❖コスティエール・ド・ニーム

寒く暗く、雨の多いアルザスで成功を収めたマルクは、奥さんエマニュエルと訪れたコスティエール・ド・ニームの陽気さと過ごしやすさに惚れ込んでしまい、移住してしまいます。
『ニームの1番の問題点は収量が多過ぎる事。カリニャンは収量が多いが、古樹のカリニャンは収量を少なくできる。偉大な個性を見せてくれる。大きな可能性だった』
今では13haまで畑を増やし、元々あった樹齢80年のカリニャンを中心に、リースリング、ゲヴュルツトラミネル等アルザス品種も植樹し、ニームの可能性を広げています。
『ニームで唯一、栽培過程で難しいのはミルデュー(ベト病)だった。リースリングやゲヴュルツトラミネルは耐性を持っているのでニームと相性が良いと思った』
土壌は赤い鉄分を含んだ粘土質でシャトーヌッフデュパプと同じガル・ガーレ土壌で大きな石が多い。地中にはシリカ、水晶も多く含まれています。
『ニームは南ローヌよりもPHが3.2と低く、ワインは暑さの中で育っても酸度やミネラルによる硬質感も失わない。甘さや重さを感じさせないフレッシュなワインを造れる土地』