モンブルジョー

●ジュラで最も繊細で軽い酒質の『レトワール』●

1920年からレトワールでワイン造りを始めた最古の造り手の1人でジュラ唯一の女性当主。畑は有機栽培が徹底され、森を残し、生物多様性を維持。醸造はお爺さんの代から変わらない伝統的スタイル。

レトワールの個性

ジュラのACの中で最も小さく、フランス国内でも入手が難しいワイン「レトワール」。僅か52haで十数軒のワイナリーが点在している。




ジュラの南部に位置し、5つの丘に囲まれていて、ジュラ以外で見かけることはほとんど無い。

『この5つの丘が星のように広がっているからレトワール(星)という名前がつけられたと言われていて、この地形がワインに繊細さを与える』

複雑に入り組んだ丘のお陰で南西向きの温暖な畑と北東向きの冷涼な畑が混在する。これが重さではなく、繊細さや複雑味を与える。

『降雨量も北部より多い。これによって葡萄は酸度が高いまま成熟する傾向にあり、これもレトワールの繊細さに寄与している』

土壌はジュラ紀石灰質土壌が主体でシャルドネが植えられているが、一部青いマール土壌があり、サヴァニャンとの相性が良い。

『レトワールは海底だった層が表土になっているのでヒトデの化石(星型)が出土する。これもレトワールの語源と言われている』

ジュラで最も生産量が少なく、最も女性的で繊細な味わいがレトワール。その代表的造り手で最も古典的スタイルが「モンブルジョー」と言われる。

ジュラ唯一の女性当主

ジュラの造り手の中で唯一の女性当主が、現モンブルジョ当主「ニコル・ドゥリオー」。1986年からワイン造りに参加している。

『1920年にお爺さんヴィクター・グロがレトワールに葡萄樹を植樹したのがモンブルジョの始まりでレトワール最古の造り手の1人だった』

1956年には父親である「ジャン・グロ」が畑を買い足し、クレマン・ド・ジュラの販売を開始。クレマンの造り手として人気を博した。

『その地形から酸度の高いシャルドネが得られたので高品質クレマンの産地としてレトワールは認知されるようになっていった』


現在11haを所有。7haがシャルドネ。1.5haがサヴァニャン。残りがプールサールとトゥルソー。

『お爺さんの代から有機栽培が続けられ、農薬はほとんど使われていない。今ではビオディナミも一部取り入れながら独自の栽培をしている』

ニコルはディジョン大学で栽培と醸造学を学び、独自の考えで畑を活性化している。ビオディナミ等の認証はフレキシブルさを失うので嫌い。

『レトワールは窒素が不足しがちで、それは発酵を不健全なものにしてしまう。豆類を植えることで自然酵母での発酵がスムーズになる』

畑は5ヶ所に分かれていて、全ての畑は森と隣接していて生物多様性を確保している。また、南向きと東向き斜面を畑にしていることも重要。

『クレマンは東向き斜面下部の葡萄を早く収穫して酸度を活かす。東向き冷涼区画をアッサンブラージュすることで繊細さを守っている』

最も高い樹齢はおよそ100年でシャルドネとサヴァニャンの混植になっている区画で特別キュヴェ「バノード」に使われる。

 

何も変わらない醸造

醸造はお爺さんの時代から変わらない伝統的醸造。野性酵母のみで発酵。ボトリング時のみ、極小量の亜硫酸を添加するが、熟成中は無添加。

『熟成中は亜硫酸を加えない。産膜酵母も自然に任せるので樽毎に産膜酵母が着いたり、密閉度の高いフードルなどは産膜酵母がない事もある』

色々な樽で熟成させ、産膜酵母が着いたものと着いていないものをアッサンブラージュすることで重過ぎない、繊細なレトワールとなる。

『発酵中も熟成中も温度管理は一切しない。自然な温度変化がその年の個性を産む。葡萄だけでなく、熟成中の気候もヴィンテージの個性』


産膜酵母はレトワールに自生する独自のバクテリアが生成するもので、スペインのフロールとは根本的に異なる性質なのだそう。

『ヴァン・ジョーヌもアルボワのように高温の環境で熟成させるのではなく、地下セラーの温度の低い環境で熟成させる』

温度が低いと蒸発分は少なく、酸化ニュアンスは弱い。また産膜酵母も薄いので熟成したチーズのような強烈な香はなく、コンテのように繊細。