パラッツォ・トロンコーニ

●何も足さない引かない!農民のテーブルワイン●

 

ローマ時代の荘園の復活

ラッツィオ州フロジノーネ県のはずれアルチェ村。ローマ帝国時代から葡萄をはじめ素晴ら しい農作物の産地として名を残してきた。この地で 400 年続く荘園を営んできたマロッコ 家は 60 年代、マルコのお爺さんの時代に全ての農地を売却。鉄道会社で働く為にロ ーマに移住して、荘園の歴史は終わります。 その後、ローマでエンジニアとして活躍、エレベーター製造会社を立ち上げ、財を成したマ ルコ・マロッコは幼い頃に見て、経験したお爺さんの農業が忘れられず、農業にこそ自分 達家族のルーツがあると考えるようになっていきます。遂には会社を清算。37 歳でトスカ ーナの農業学校に進学し農業を学び、ワイン造りに興味を持つようになります。 卒業後、ボルドーのグラン・ボーセジュール等で実際のワイン造りを経験した後、故郷に 戻り、祖先の土地を買い戻し、畑に仕立て直していきます。400 年続いたマロッコ家の 荘園を同じアルチェ村で再現していったのです。


 

ビオディナミは必然だった

2010 年、マルコはパラッツォ・トロンコーニを設立。自分達のルーツである土地の個性を 再生し、後世に残していく事を目標に葡萄だけでなく野菜、オリーブオイル、蜂蜜の生 産を手掛けるお爺さんと同じ昔ながらの農園に戻していきます。 アルチェ村の個性を際立たせる為に、自然と必要になったのがビオディナミと土着品種の 復活。農業学校で学んだ事はお爺さんの農業の否定でした。圧倒的に効率的で世界 で受け入れられている農業を学んでも、自分達のルーツである土地の個性を再生する 事とは出来ないと感じてしまいます。お爺さんの手作業の仕事、知恵は、ビオディナミと ほぼ同じ思想である事に気付いたのです。 葡萄樹は土壌を介して土地と結び付き短期的にも長期的にも成長(変化)していき ます。土壌を健全に保つ事こそが土地の個性の最大化だとすると、唯一の方法は土壌 に科学的なものを与えず、正常化し自然の一部に戻していく事だったのです。 

 

土着品種を忘却から救う

もう 1 つ重要だったのが、この土地の土着品種の復活。マルコは文化や農業と同じよう に効率化(平均化)されていくワインに疑問を感じ、この土地に元々あった土着品種 こそ、この土地に最も相性が良かったはずと考えるようになります。栽培や醸造技術の 乏しかった時代に、自然と選ばれた土着品種は、この土地の土壌の力とテロワールに最 も相性が良かったはずなのです。 出来る限り、昔の農業と同じ環境を実現するべく、全ての化学肥料や現代技術を排 除していきます。それは、言い換えれば、天(栽培)と地(土壌)のバランスを保つ事 でした。そして、それを可能にするのがビオディナミだったのです。 土着品種の個性は質素で田舎っぽく、あか抜けないものでしたが、ローマ時代から愛さ れる気品や繊細さがありました。これを活かす為に醸造面では野生酵母での自然発酵 が採用されます。清澄やフィルターなどのワイン造りを楽に(経済的に)する事で本質 的美味しさ(あるべき姿)を失うのを嫌います。