ピエトラクーパ

●『フィアーノ』『グレコ』の最高峰●

古いフィアーノのクローンをマッサルセレクションで残している。収量は少ないが圧倒的な骨格を得る。収穫は酸度を意識して完熟の1 歩手前。塩味が強く感じられる個性的なワイン。

ピュアでまっすぐなワイン

1993 年、「ピエトラクーパ」はアヴェリーノに近い無名の地「モンテフレッダネ」に設立された。落ち着きがなく、動き回る「サビーノ・ロッフレード」が 当主。スポーツインストラクターを辞め、愛するワインで地元の復興を目指すことを決めた。

『目的はモンテフレッダネの復興だった。火山岩が風化した土壌はミネラルの表現に最適。標高の高さがワインに厳しさを与えてくれると思った』

父「ペッピーノ」が 1970 年に購入した家の一部を改装してワイン造りが始まった。1 年目から彼等のワインは各誌で最高評価を獲得する。当時では珍しい、質を追求する小規模カンティーナの成功例として注目を集め、彼等の成功でイルピニア自体も人気が高まっていった。

『当時のイルピニアは南イタリアの重厚なワインというイメージだった。だが本当の個性は過度な抽出ではなく、ピュアな果汁の中にあった』

当時の常識だった過熟気味の葡萄ではなく、酸を残したフレッシュな葡萄を使って今までのイルピニアのイメージを一新していく。火山岩の硬さ、昼夜の温度差による引き締まった味わいを前面に出す為にステンレスタンクのみで低温 で仕上げる醸造も珍しかった。

『自分の好きなワインを造る。だらしない味は嫌い。造り込んだ味は嫌い。素直でまっすぐ伸びる味わいがこの土地の個性』

古代クローンのフィアーノ

「ピエトラクーパ」を有名にしたのが「フィアーノ」。彼等は名前もない古いクローンをマッサルセレクションで残している。
 

『普通のフィアーノより樹勢が弱く 1 つの樹に4 房程度しか実が着かない。房も小さく結実不良が多い。更に粒も小さく果皮が厚い』

火山岩土壌に相性が良い。通常の「フィアーノ」の半分程度しか実を着けないし、結実不良が多いので収量は非常に少ないが酸の質が高い。

『葡萄は養分を蓄えて成熟する。水分が少なく凝縮し過ぎるので、暑い2015 年は雨が降るまで収穫を待ったほどだった』

果皮の厚いこの古代種は果皮に多くの成分を持っていて非常に熟成力が高い。 若い内は蜂蜜のニュアンスやアロマティックさもあるので親しみやすさがある。よって早目に飲まれてしまうのが残念。10 年以上熟成する。

『モンテフレッダネ産の熟成したフィアーノはシュナン・ブランやリースリングのような高貴さを感じさせる。イタリア最高の地品種の 1 つ』

もう 1 つの重要な品種が「グレコ」。ヴェルディッキオに近いこの品種は房が大きく、葡萄がコンパクトに集中してしまう。

『粒と粒が密着するので風が通らないし、果皮が薄い。よってカビや病気に弱く、雹にも弱い。フィアーノより手間がかかるが収量は多い』

雹害のリスクが無くなる 7 月初旬まで摘芯を行わず、上部に葉を残す。下部は風通しを良くする為に葉も落とし、下草も刈り込む。仕立はグイヨだが 2m 以上の高さになる独特の畑になっている。

『グレコは一般的には厳し過ぎる味わいかもしれない。だが塩味を楽しむには最高の品種。バランスをとる気はない。土地そのままの味』

 

次の挑戦はアリアニコ

重要なのは酸度。糖度ではない。果皮に緑が残る、完熟 1 歩手前で収穫しなくては熟成した後の個性を感じることはできない。
 

『最近では 2 つ目の房や未熟果も一緒に収穫して発酵させている。過度に均一であるよりも不揃いであることが複雑味を作る』

カンティーナはシンプル。収穫した葡萄は自宅 1 階部分、半地下のステンレスタンクに重力で落とし、18 度程度の低温から発酵。そのままステンレスタンクで熟成。マロラクティック発酵は自然に任せている。一部は起こり、一部は起こらない。

『2008 年、トッレ・レ・ノチェッレ村のアリアニコの畑を取得。タウラジへの挑戦を始めた。白ワイン同様に垂直性のある味わいを目指す』