ヴィニェーティ・マッサ
●『ティモラッソ』は畑の個性を表現できる●
「ティモラッソ」を人気の品種にまで引き上げたのが「ヴァルテル・マッサ」。造り手の間でも変人と言われるがワイン 造りを通して地元の復興を目指す情熱の人。
ティモラッソの父
当主「ヴァルテル・マッサ」はトルトーナ地区「モンレ アーレ」の産まれ。祖父も健在で現役で「ティモラッソ」からワインを造っている。
『30 年前まではモンレアーレには 60 軒以上のカン ティーナがあり、ワイン造りが行われていたが 5 軒まで減少してしまった』
彼等はこの町を「ティモラッソ」で復興させようと、大 量生産を中止し、当時は考えられなかった高品質 「ティモラッソ」を造り始める。
『1800 年代ティモラッソは食用として人気だった。 トルトーナ原産だが北イタリア全域に広がった。アレ ッサンドリアではコルテーゼにブレンドされた』
PH が低く、糖度も高い。高貴品種としてのポテンシ ャルを持っていたが、正しい栽培と正しい醸造がな されていなかったことに気付く。
『ティモラッソは土地の個性を表現できる。そして偉 大な酸を持っていた。しかし、酸化に弱かったので 扱いは難しかった』
1987 年から「ティモラッソ」を植樹し始める。その当 時「ティモラッソ」をボトリングしていた人は 1 人もいな かった。 全ての畑を 6000 本/ha の密植に植え替え、収量制 限を行う。繊細な香を活かす為にステンレスタンク で低温での低温発酵を採用。
『品種特有のナッツ香、グレープフルーツ、ミネラル 感は高い温度での発酵やマセラシオンによってマス キングされてしまう』
収穫後すぐに低温で 2~3 日だけマセラシオン。25 度以下に管理しながら、長めの 30 日間発酵させる ことで品種個性が前面に出てくる。
奇才ヴァルテル・マッサ
「エリザベッタ・フォラドーリ」は友人「ヴァルテル」のこ とを何でもできる変人と呼んでいる。 地元「モンレアーレ」の町をワイン造りで復興させた 情熱家であり、変革者。「ティモラッソ」という品種を 一気に有名にしてしまうプロモーターでもある。
『そして品種個性を理解し、表現する天性の感覚を 持った醸造家でもある。彼が造ると全ての品種の 個性がワインに素直に現れる』
彼の畑は全て「モンレアーレ」に位置。標高は 300~ 350m。仕立はグイヨだが、春の摘芯を行わず、ツル は自然に伸ばされる。 ツルの先端を切るとツルの成長が止まり、果実に栄 養が使われるようにするのと同時に果実の成長を同 じタイミングにすることになる。
『同じ成熟度の葡萄だけでは複雑味は出てこない。 摘芯をしないで芽かきも最小限にすることで不揃い な成長が期待できる』
畑内で微妙に成熟度が違うことが重要で自然。成 熟度が綺麗に揃った葡萄からは単純なワインしかで きない。
『少し完熟前のティモラッソはグレープフルーツやカ モミールの香がある。完熟したティモラッソは蜂蜜や ナッツのニュアンスが出てくる』
色々な成熟度の葡萄が一緒に発酵することで、より 複雑で奥行きのあるワインが産まれる。
新しい畑モンテチトリオ
■ステルピ 表土が薄く岩盤の上にある畑。土壌中にはシリスが 多く含まれるので痩せている。
『表土が薄くて支柱を打ち込めない。ワインは細くミ ネラルが強烈に表現される』
■コスタ・デル・ヴェント 南東向き。マール土壌で石灰がほとんど無い。日照 量も多いので葡萄は完熟する。
『葡萄果実を最も感じられる畑。口中での甘み、広 がりが大きい』
■モンテチトリオ 新しい畑でまだ樹が若い。粘土に小石が多く混じり 海に由来する化石も一番多く出る。
『最もティモラッソも個性を感じさせる畑。バランス が良いが熟成力もある』