ヴィッラ・パピアーノ

●ロマーニャ地葡萄「アルバーナ」「サンジョヴェーゼ」の可能性●

ロマーニャ地区で19生産者の醸造コンサルタントを務める「フランチェスコ」が遂に自分のカンティーナを立ち上げた。 今最も注目すべき造り手と言える。アンフォラ発酵・熟成のアルバーナにも注目。

2001年設立

「ノエリア・リッチ」や「ヴィッラ・ヴェンティ」の醸造責任 者を務める「フランチェスコ・ボルディーニ」。親子 2 代に渡ってロマーニャ専門で醸造コンサルタントをし てきた。 醸造だけでなく、ロマーニャの土壌と気候の研究も行 っていて、地域毎のテロワールを活かしたワイン造り をこの地域で初めて開始した人物でもある。

『ロマーニャにはトスカーナとは気候も土壌も違う。ロ マーニャらしさを表現するには量を捨てて質を目指さ なければいけない』

地域全体の品質向上に努めてきたが、2001 年、遂 に自分のワイン造りをすべく、家族と共に廃墟となっ ていたカンティーナを購入した。

『トスカーナに近いキオーダ山の奥地、標高 500m で まわりは全て森。冷涼な気候は葡萄樹に適度なスト レスを与えてくれる理想の地だった』

量産には向かない山奥の厳しい環境。勿論、他の造 り手は畑を持たない。500 年以上まわりは全て森林 だったので環境は最高の状態であった。

『泥灰土に砂岩が混じる痩せた土壌。樹勢は抑えら れ、冷涼な気候によって生育も遅い。ハンギングタ イムの長さが気難しいが長熟なワインを産む』

ワインはロマーニャの可能性を証明するかのようなシ リアスで凝縮した印象。芳香よりもミネラルの力強さ が支配し、強固で垂直的味わい。

 

森と共存する畑が理想

2009 年以降、10ha の所有畑では極少量の銅と天 然硫黄、コンポスト以外は使用していない。

『有機認証基準値の半分以下の使用量。特に銅は 元々地中に存在しない成分なので 3kg/ha 以下に 厳しく制限している』

灌漑も行わない。樹齢 20-45 年の葡萄樹は乾燥し た年や酷暑の年を経験して根を深く伸ばし、最低限 の水分を確保できる場所を知っているから。

『極度の乾燥が襲った 2012年でも灌漑無しに葡萄 樹自身が通常より果実を小さくして生き延びた。生 産量は半減したが、それが自然の抗耐力』

ロマーニャのイメージとは異なり、標高 500m の山中 は冬には雪が降り、地中の微生物はある程度死滅す る。雪は春先に溶けて土壌は水分を蓄える。

『まわりを森に囲まれているので葡萄樹も森の一部 となり、他の植物や動物、昆虫の影響を受けながら 自然のバランスをとる』

自然のサイクルが理想的に機能しているのは人が作 った環境ではないから。自然が長い歴史の中で作り 上げたバランスの中に葡萄樹があるのだ。

 

 

40日間マセラシオン

醸造の特徴はサンジョヴェーゼ・ディ・ロマーニャでは 珍しい長期マセラシオン。ベースのキュヴェでも 24 日間のマセラシオン(通常は 5 日程度)。

『ロマーニャ種は粒が大きく水分が多いので骨格が 不足しがち。マセラシオンでは濃さではなくワインに 厳格さを与えたい』

その後は樽には入れず、ステンレスと瓶内で熟成。フ レッシュさと硬質感こそがこの土地の個性。 樹齢 50 年のロマーニャ種からはリゼルヴァが造られ る。この畑は 8,000 本の密植で、着ける果実は非常 に小さい。

『リゼルヴァは40日間のマセラシオン。果汁が少なく、 果皮の比率が高いので果皮の影響を強く受ける。 全ての要素が強いので大樽で 1 年間熟成』

もう 1 つの個性がアルバーナ種。この地の固有種で 果皮が非常に厚く、タンニンが豊富。酸度も高く、ミネ ラルの表現に向く。 彼等はアルバーナで 3 種類のワインを造っている。1 つは伝統的遅摘みのデザートワイン。酸度を残した 9 月末の収穫と 10 月末の貴腐菌が着いた葡萄を 別々に発酵。

『6 ヶ月間自然酵母のみでゆっくり発酵させることで 甘いだけでなく複雑な味わいを得る。また早い収穫 の葡萄が酸度を与えてくれる』

辛口のアルバーナ「テッラ!」はアンフォラで発酵。6 ヶ月間マセラシオンという珍しい造り。 一般的なアロマティックなアルバーナではなく、ミネラ ルが前面に出る「モディリアーナ」らしいワイン。

『アンフォラ発酵、6 ヶ月マセラシオンでも繊細で綺 麗なワインに仕上がっている。酸化やバクテリアの 繁殖は全くない』

3 種目がヴェルモット。アルバーナの遅摘みデザート ワインに少量の砂糖、シナモン、グローヴ、生姜、レモ ン、オレンジピール、スパイスを加えて熟成させた昔 懐かしい手作りヴェルモット。

『暑過ぎる年のアルバーナは遅摘みすると果皮のタ ンニンが多過ぎてデザートワインには向かない。遊び で造ってみたら美味しかった』