ヴァンタージュ

●耕作放棄畑を再生●

ソムリエの資格を取得した若い エリザベッタが更にワインを突き詰めていく内にワインのサービスや分析ではなく、地元 アオスタのワイン造りの復興に興味を持ち始めたワイナリー。

保守的なアオスタ

アオスタほど保守的で、ある意味変わらない産地は珍しいかもしれませ ん。
地元消費比率が高いので、世界の嗜好に合わせたり、色々なワイ ン造りが導入されたりという事が上手く進んでいないのかもしれません。
そんなアオスタで長くレストランで働き、ソムリエの資格を取得した若い エリザベッタ。
更にワインを突き詰めていく内にワインのサービスや分析ではなく、地元 アオスタのワイン造りの復興に興味を持ち始めます。
2014 年、偶然、 放棄された葡萄畑を借りる事ができ、念願の葡萄栽培を開始。
2年後 の 2016 年には極少量のワインを地元で販売し始めました。

 

尊敬する造り手を模倣

尊敬する造り手は、グラヴネル、ヅィダリッヒ、フォラドリ、ラディコン、ダリ オ・プリンチッチ、ヴォドピーヴェッチ…。
こうなると大体どんな方向性か 解りますよね?
生物多様性、自然栽培、循環型農業の実現。
畑では 銅と硫黄、プロポリス、乳清、ハーブしか使いません。
全ての化学薬品 は排除されています。土壌に長く残留してしまう銅は年間 4gまで使用 が許されていますが 0.5g しか使いません。
そして、彼女が最も重要視しているのが耕作放棄畑の再生。
過疎化や 高齢化に伴い、過酷な葡萄畑での栽培は敬遠されがち。
年々耕作放 棄畑は増えています。樹齢は高いが、剪定等の正しい処置がなされて いない畑を時間をかけて再生し、健全な葡萄が収穫できるよう改善し ていきます。

 

経験値ゼロ

栽培も醸造の経験もありませんでした。
興味を持ち、信じる造り手達に 尋ね、失敗する事で学んでいきます(2016 年の赤ワインは全滅)。
毎 年、約 20 種類の醸造を試し、半分を失敗…。プラスチック容器、古バ リック、アンフォラ、石製の容器、なんでも試し、失敗を繰り返していく事 でしか学べない事も多いのだそう。
醸造面での拘りは、自然の中で生き抜く力を持った高い樹齢の葡萄樹 を作ればエネルギーを持った葡萄ができる。
同時に自然酵母も手に入 る。それを最大限に活かす事。まず、エネルギーのある葡萄。樹齢の 高さから凝縮度を得る。
その葡萄を自然酵母だけで発酵。黒葡萄でも 白葡萄でも果皮の要素こそ葡萄の重要な個性と考え利用します。
清 澄、フィルターはある種の旨味を奪うと考え、一切行いません。酸化防 止剤は醸造中、一切使わず、瓶詰時に極少量添加するというもの。

 

本当のアオスタ

アオスタの環境と言うのはワイン造りにとって非常に厳しいものです。
最 も多くの畑があるシャンバーブはヨーロッパ全域で最も乾燥する土地と 言われています。
イタリア北部に位置しながら夏はトスカーナよりも暑く、 日照量はシチリアを超えるほどです。
そして、他のどの地域にもない土着品種が多く残り、棚仕立てや混植な ど時代と共に消え去った伝統的な農業が残っているのです。
この素晴 らしい伝統的農業を、放棄された畑と共に捨て去ってしまうのは悲し過 ぎます。
放棄された樹齢の古い葡萄樹を再生する事がエリザベッタの1 つの大きな目的なのです。

 

新しいライン“Nego-Mani”

買い葡萄で作るエリザベッタの新しいライン。買い葡萄と言っても、信頼できる友人と叔父から。当主エリザベッタと葡萄畑に対する方向性は 全く同じで、一切のケミカルは使用せず、同じ哲学を共有している仲間たちです。ボトルは少し背の高めのボルドーボトルを使用しています。

叔父マルコ
農夫で羊飼いでもあったマルコ。従妹の引っ越 しを機に羊を売り葡萄栽培に専念。サルデーニ ャの小さな町ヌッリ(カリアリのすぐ上にある南部 地域)にあった 100 年以上続く古い家族経営の 葡萄畑を復元しました。赤と白の混植の畑。

 

友人ステファノ
家族ぐるみの友人。アオスタで非常に古い葡萄畑を所有。昔からずっ と変わらず家族で葡萄畑を保有しています。現在はステファノの父が 当主。地元のコーポラティヴには販売はせず、友人や優良生産者に のみ販売。2020 年にエリザベッタのワイン造りに共感し、また自分たち の葡萄の力を表現できることを確信し、協力する事になりました。