こんなワインです
2つの区画から収穫される樹齢20年のシャルドネ。典型的な粘土石灰質土壌で小石が多いのが特徴的。この畑のシャルドネは上品さと十分な果実味。そして桃やバラのような充実した香りを持っている。暑い年でも重くなく、口中はとてもフレッシュで伸びのある味わいになっている。
フィリップ・パカレのワイン
WINERY
生産者情報

フィリップ・パカレ(ブルゴーニュ/ローヌ)
●全房発酵・自然派の代表格●
色々な野性酵母を活かしきる環境をつくることこそが醸造。そして美味しいワインはいつ飲んでも美味しい。熟成による美味しさも大切だが、今美味しいことも重要。進化するフィリップ・パカレ。
ジュール・ショヴェ最後の生徒
「ディーヴ・ブテイユ」等サロンでも相変わらず大人気の「フィリップ・パカレ」。近年のフィリップのワインは難しさが抜けて「幸せな美味しさ」。 故マルセル・ラピエールを叔父に持ちディジョン大学で醸造学を学んでいた時に醸造家であり自然な醸造を体系化したジュール・ショヴェに師事した。ジュール・ショヴェに学んだヴィニュロンは数多いがフィリップが最後の教え子で全てを学んだと言われている。
『ジュール・ショヴェとマルセルに全てを学んだ。彼等の経験や知識こそが財産。それ以上のことは何もない。ワイン造りは実はシンプルなもの』
その後、プリューレ・ロックの醸造を10年間担当。彼がプリューレ・ロックで造ったワインを一緒に飲む機会があった。
『プリューレ・ロック時代は栽培も醸造も迷いがあった。香も口中も素直な美味しさがない。今の僕のワインとプリューレ・ロックは全く違う』
D.R.Cから醸造責任者の誘いもあったようだが、2001年「フィリップ・パカレ」として独立した。
野性酵母と発酵温度
『除草剤や除虫剤はドーピングと同じ。葡萄樹を栄養過多にし、抵抗力を落とすだけ。そして酵母を死滅させてしまう』
フィリップが最も大切にするのが畑に生息する野生酵母。土壌の力をワインで表現する為には野生酵母でないと無理だと考えている。よって化学薬品の使用は一切行わない。使用するのは硫黄とオリゴを多く含む植物性調剤、マグネシウムを含むシリスのみ。 醸造所では、まず人間がトロンコニック型発酵桶に入り、足で優しく葡萄をつぶしていく。発酵は「セミ・マセラシオン・カルボニック」による全房発酵。発酵中の温度管理は行わない。
『自然を維持した畑の野生酵母は約30種。それぞれの酵母が働く温度や環境は異なる。低温からゆっくり温度が上がりながら発酵することで色々な酵母が働ける。色々な酵母が色々な味を作る』
発酵温度を調整すると一部の酵母しか働かない。その酵母が作る味になる。それは複雑味やその畑の個性を感じさせない単純な味ということ。
『人工酵母は強力。少しでも加えれば他の酵母を殺してしまう。他の酵母は全く働けないので人工酵母が作る味になる。世界中同じ味だ』
アルコール発酵後は228L樽でマロラクティック発酵及び熟成。熟成中はできる限り酸素との接触を避け、澱と接触した還元的な状態においておく。
『発酵中は酵母。熟成中は澱が重要。ワインにとって澱は胎盤のようなもの。バトナージュはしない。樽の移し替えを1回する。これでバトナージュと同じ効果が得られる』
醸造中はSO2を一切添加しない。瓶詰め前に必要最低量のみ添加。早く消費するボジョレー・ヌーヴォーは完全SO2無添加で造ることもある。
自然なワイン造りは化学でもある
「ヴァン・ナチュール」の代表のように語られるフィリ ップ・パカレ。実際には自身が行うワイン造りは全て化学で証明出来ると考える理論派。
『必要ない化学薬品を捨てる為にはワインに関する化学を全て知るしかない』
ジュール・ショヴェの言葉。フィリップの大好きな 言葉で毎回会話に出てくる言葉。彼が造りたいのは土壌を表現したワイン。
『土壌を表現する為に自然酵母が必要。自然酵母を育てるにはバクテリアや微生物が必要。化学薬品を使わないサイクルができあがれば何も加える必要がなくなる』
近年のフィリップは以前のような緊張感が消えてワイン造りを楽しんでいるかのよう。畑でもセラーでも葡萄やワインを理解できているからだそう。